生まれ変わったときには今度こそ一緒になろうね。そう誓い合ってお互いの胸を突き命
  を絶ったあの日・・・

  200年後。

  僕は生まれ変わり、生まれ変わった彼女を探しつづけていた。

  しかし世の中は広いもので、見つからない。彼女は一体どこに行ってしまったのだろう。
  どこで生まれ変わって、僕を待っていてくれるんだろう。僕は必死で探しつづけた。も
  ちろん僕は生まれかわってから両親に育てられ、それなりの年齢になっている。彼女を
  迎えに行くには十分な年齢だ。

  幸いにして(こんなこといったら失礼かもしれないが)、今回の両親は早くに亡くなって
  しまったので、いまは独り身。気楽に暮らしていける。だから、こうして彼女を探して
  いるんだけど。

  てがかりは2人で取った写真。それだけしかない。それも200年前の写真などのこって
  いるはずもないので、僕が記憶を便りに書き起こしたものだ。これを彼女がみればきっ
  と思い出すはずだ。僕の記憶もそれくらいしか残っていない。僕が彼女を愛していると
  いうこと。彼女も僕を愛してくれているということ。事情により心中して、来世で一緒
  になろうと誓ったこと。

  かなり探しているのだが一向に見つからない。どこをどう探しているのか?といわれて
  も困るのだが・・・

  しかし、ついに彼女の居場所を見つけた!とある山の中でひっそりと暮らしているとか。
  なぜ僕のところにきてくれないんだろう。僕を探してくれないんだろう。僕らには超能
  力というべきか、お互いがどこにいるのかそれなりにわかる感覚が備わっているらしい。
  でも半ば不安になりつつも彼女に会いたい気持ちを高ぶらせながら現地へ向かった。夏
  の暑い日だった。

           ☆              ☆              ☆              ☆

  彼女が暮らしているというところは都心から遠く離れた山奥の山荘だという。山荘とい
  ってもどちらかというと別荘に近いくらい大きい屋敷だとかいうことで、そんな広いと
  ころで1人で暮らしているということだ。そんなところで、どうして1人で暮らしてい
  るんだろうか。僕がそこに行ったら、彼女はどうするんだろう。一緒に僕のうちに来て
  くれるのかな。それとも僕がその山荘で一緒に暮らすのかな。

  いろいろな想像を膨らませながらも僕は山荘に到着した。きれいな屋敷だった。作り立
  てといった感じが見て取れる。こんなところに彼女が暮らしているのだろうか。僕だっ
  てこんな山荘持てる金銭的余裕なんかないのに、彼女はどうやってこんな大きい山荘に
  住んでいるんだろう。それとも生まれ変わった先の家族が大金持ちとか?

  しかしだ、どうやって説明すればいいんだろうか?彼女がいれば彼女が説明してくれる
  んだろうか。それともすでに僕を迎えてくれる準備が整っているとか?・・・さすがに
  そんなことはないか。彼女の記憶が100%戻っているとは限らないし・・・

  とりあえず玄関から普通に名乗ってみるか。ドアを叩いて誰か出てくるか待ってみる。

  「・・・」

  誰もでない。誰もいないのだろうか。こんなに小奇麗なお屋敷なのに・・・

  「誰かいないんですか?」

  そう言ってみるも反応はない。本当に誰もいないんだろうか。でも彼女の意識はここに
  ある。彼女はここにいることは間違いない。僕の感覚がそう言っている。彼女も僕がこ
  こに来ていることは分かっているはずだ。なのに、なぜ僕を迎えに来てくれないんだろ
  う。迎えにこられない理由でもあるのかな・・・

  ピシッ!

  あまりにしつこく付きまとう蚊がいたので、撃墜してやった。さすがにこの辺は虫が多
  いのかな。虫除けをしてくれば良かったと後悔した。しかし、蚊にさされたわけでもな
  いのに、なぜか腕が痛む。無論、強い痛みなわけではないが・・・あらかた、他の蚊に
  でもさされたんだろう。

  ・・・かれこれ3時間くらい屋敷の中を(勝手に入ってしまったが)探しているのだが、
  彼女は見つからない。日が傾いてきた。夜になってしまうとさすがにここに残っている
  のはマズいだろう。ただでさえ不法侵入として訴えられてもおかしくない現状なんだか
  ら。

  仕方ない。今日のところは帰るか・・・

           ☆              ☆              ☆              ☆

  その夜、布団に潜りながら感性を澄ませて彼女の居所をもう一度探してみた。僕の感性
  を彼女が受け止めてくれるなら、居場所が分かるはずだ。朝まではあの屋敷にあったの
  だが・・・















































  彼女の意識はどこにもなかった。今日の朝は確かにあの屋敷にあったのに。つまり彼女
  はいまこの世にはいないということだ。僕を置いてまた旅立ってしまったんだろうか。
  仕方ない。僕もまた、旅立つしかないということか・・・

  首を吊る準備をして、足を乗せている椅子を蹴って首を吊る。喉に締め付けられる縄。
  僕の意識はすぐさま遠くなっていく。そんな短時間の間に今日の出来事が思い出されて
  いた。

  僕の周りに付きまとっていた蚊。あの蚊を思い出していた。その瞬間は全然気にしてい
  なかったのだけれど、いまその情景を思い浮かべてみるとあの蚊の顔は彼女の顔をして
  いたのだ。

  だから、彼女は僕の側によってきた。そして血も吸わずに近くで飛んでいたんだ。それ
  を僕は無下に殺してしまったんだ。僕が彼女を殺してしまったんだ!

  そして僕の意識は急速に遠くなっていく。願わくば来世は彼女と同じ生物であるように。


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