<2nd Day:Kasumi's Eye>

  「検死の結果が出たようです」

  朝もはよから警察署。眠い目をこすりながら高幡の検死結果に耳を傾ける。死亡推定時
  刻は昨日の午後10時〜11時の間。背中から包丁らしき刃物でめった刺しにされて死
  亡。

  「ふぅ・・・ん」

  報告書を読み事情を把握する。問題は・・・

  「これで5人目なのよね〜」
  「そうなんですよ」

  この手の殺人がこの10日で5件も起きているということ。しかも手口もみな同じ。時
  間もほぼ同じ。そう考えると・・・

  「やはり同一犯の犯行なのでしょうか」

  という高幡の気持ちも分かるわよねぇ。普通そう考えるしかないもの。さらにいうと被
  害者の5人に共通するものもなさそうだし・・・そう考えると通り魔のような通りすが
  りの犯行の可能性もあるわね。

  「5人で殺人が終わる保証もないし、あのあたりを警戒させる必要があるかもしれない
  わね」
  「そうですね。手配させますか」
  「ええ。そうして」

  これで第6の殺人が起きないように祈るしかないわね・・・その間に私たちは犯人を捜
  さないと。

  とりあえず現場へ行くことにしようかしら。高幡には被害者の身元を調べさせて。

             ☆              ☆              ☆              ☆

  昨日の惨事はなかったかのごとく昼間の秋葉原は活気がある。昼間からこうこうと光る
  ネオン。鳴り続ける店内音楽、店内放送。途絶えることのない人の流れ・・・。現場は
  そんな秋葉原の大通りからちょっと入った裏手の露地で起きていたので、誰も気付かな
  いのだろう。朝のニュースとかで流れなかったのかしら。全然騒ぎにもなっていないけ
  ど。

  現場。もう片づけられてしまって何もない。薄く血の跡が残っているけど、血だといわ
  れなければ気付かないくらいのもの。その他にはもう何も残っていないさそうね。

  周りには数人の人が歩いている。秋葉原に買い物に来たお客かしら。でも、この辺にお
  店なんかあるのかしらねぇ。

  「あ、ち、ちょっと」
  「え?あ、あは。なんですかぁ〜」

  近くにいた男の子を捕まえて話を聞いてみることにした。ちょっと太目の子。ん?なん
  か匂うわね。

  「警察なんだけど、この辺ってお店の一つもないんだけど、穴場みたいなお店があるの
  かしら?」
  「え?い、いやぁ。なんにもないですよぉ〜」

  な、なんなのよ。そのねちねちっとした声色は!しかも・・・臭い。ちゃんとお風呂入
  ってるの!?良く見ると、いつ洗ったか分からないようなスレスレのジーンズに、アニ
  メ柄のプリントTシャツ。手に持ってるのは・・・ポスター?背中にはキーホルダーが
  じゃらじゃらひしめくデイパック。ふと周りを見渡すと・・・

  な、なによ!同じようないでたちの人間ばっかりじゃない!・・・なんかめまいがして
  きたわ。

  「で、おねえさん。何か用ですか?」

  ん?なんかいやな感覚・・・下げていた頭をはっと上げたとたん。

  カシャッ!

  なに?なに?なにしたのよ?

  「えへへ。おねえさん、奇麗だからデジカメで撮らせてもらいました・・・いひひ」
  「撮らせてもらったって・・・なにを?」
  「まぁいいじゃないですか、気にしないでくださいよぉ〜」

  そういうが早いかその太めの男の子はその体に似合わず猛スピードで去っていっち
  ゃった。どこにあんな運動能力があるのかしら?・・・ってなにされたのか分から
  ないまま逃げられたって事じゃない!

  とおもったけど、当の本人はすでにどこかへ雲隠れ・・・はぁ。

  手がかりはなさそうね。とりあえず帰ろうかしら。