<3rd_GRADE 第9章:December(1)> Shiori's EYE 『クリスマスまでに』 早いもので、もう12月。どおりで寒くなってきたわけよね。わたしと武雄君 はいつのまにか学校ないのウワサになってしまっていました。文化祭、科学部 での1件が引き金になったようです。でも、まわりの子に言わせると「ああ、 やっぱり」といった感じだそうで、幼なじみであれだけ一緒にいれば付き合い もするだろうと思うそうです。そんなものなのかしら。 なので、もう隠し事をする必要もなくこれからは正々堂々と学校に行けるね、 武雄君。 「はぁ?もとから正々堂々と通ってるじゃん。変に気にしてるの、詩織だけだ よ」 「え?」 そ、そうなの?わたし、気にしすぎだったってこと? 「ま、みんなに知られちゃったわけだからその点気は楽だな」 「そうだね」 などと他愛もない会話をしつつ登校します。そう言われてみれば何も変わって ないわね。わたし、心配しすぎなのかなぁ。 しかし2人だけそんなことはお構いなしに話し掛けてくる人たちがいます・・ ・それは・・・ ☆ ☆ ☆ ☆ 「しおり〜、今度さ、ひびきの市に植物園がオープンするんだって」 「しおり〜、来週からスターボーズの最新作がロードショーよ」 「しおり〜、クリスマスの予約は早めにした方がいいわよ」 言わずと知れたきらめき高校一の流行敏感少女、朝日奈さんです。 「んもう、そんなに毎日毎日情報をもらったって行けるわけないじゃない」 「あら、そう?学校の帰りとかに寄り道すれば全部制覇可能だよ」 そんな芸当が出来るのは朝日奈さんくらいしかいません。 「まぁ、デートスポットならあたしに任せてちょうだい。いつでもお気に入り のスポットを紹介してあげるかんね〜」 といいながら風のように去っていく朝日奈さん。さすが、としか言いようがあ りません。 そしてもう一人は・・・ 「詩織ちゃん、高城さんとはどんなところへ行っているの?」 「やっぱりさ、手、とか繋いじゃうの?」 「うらやましいなぁ。私もそういう人できたらいいなぁ・・・」 と話し掛けてくるのは、メグこと美樹原愛ちゃん。中学校以来の親友なんだけ どちょっと奥手で男の子とはおろか女の子と話す時でも緊張しちゃう子。なぜ かわたしとは波長が合うみたいでなんでも話してくれるの。逆にわたしもメグ にはいろいろとお世話になっているの。お互い相談事したり、ね。 「やだぁ、メグったら。手なんか繋がないよ」 「全然繋がないの?」 「・・・そんなことはないけど・・・」 「そうなんだ。幸せな気分なんだろうなぁ」 恥ずかしいじゃないの、手繋いでますなんていうの・・・ 「ところで、詩織ちゃん」 「え?なに?」 「詩織ちゃんは、高城さんにクリスマスプレゼントするの?」 「え?」 「やっぱりクリスマスには手編みのマフラーとかあげたりしないのかなぁって」 「そうねぇ・・・あんまり考えてなかったな」 クリスマスプレゼント。あんまり考えてなかったわ。手編みのマフラーか・・ ・でも、わたし、編み物ってやったことないのよね・・・あ、そうだ。未緒ち ゃんは編み物得意だって言っていた気がしたわ。ちょっとお願いして、編み物 教えてもらおうかな。 ☆ ☆ ☆ ☆ 昼休み。3−C。読書中の未緒ちゃんのところへ向かいます。 「あ、藤崎さん」 「未緒ちゃん、お願いがあるんだけど・・・」 「お願いですか?私に出来ることなら」 「うん。実は、編み物やろうと思ってるんだけど、わたしやったことないの。 確か未緒ちゃんって編み物上手だったから、教えてもらおうと思って」 「・・・なんだ、そんなことだったらお安い御用ですよ」 「ホント?よかったぁ」 さっそく、明日から昼休みに特訓することになりました。ちょっと恥ずかしい ので、屋上へ続く階段のところでひっそりと。幸い冬なので屋上に上がろうと する人が少ないのです。 かくして編み物特訓が始まりました。