<3rd_GRADE 第1章:April(3)> Shiori's EYE 『それぞれの進路』

  ついに3年生なのね。なんだか、もう2年間が過ぎちゃったなんて考えられな
  い。高校生活は短いから悔いの残らないように、って良く言われるけど、確か
  にその通りなのかも。早々に始業式が終わり、ホームルームも終わり。あっ、
  今日は進路面談があるんだったっけ。でもわたしは3番目だからすぐに終わる
  かも。武雄君はどうなのかしら。ちょっと武雄君のところに行ってみようっと。

  「え?俺?なんか知らないけど、うしろから5番目くらいなんだよ。だから、
  先、帰ってて」

  なぁんだ。それじゃぁ仕方ないね。また明日、って行って自分の教室へ。もう
  わたしの番みたい。

  わたしの希望は大学進学。T大学進学希望を伝えると、先生は、お前なら問題
  はないだろう。頑張れ、って。え?もうおしまいなんですか?って聞くと、藤
  崎は特に言うこともないからいいんだが、問題児のための時間みたいなものだ
  からなぁ・・・だって。

  「朝日奈を呼んできてくれ」

  と先生。なんだかため息ついてる。朝日奈さんとの面談がそんなに嫌なのかし
  ら。朝日奈さんだって一生懸命だと思うんだけど・・・

  教室に朝日奈さんを呼びに行きます。それが終わったら帰るとしようかしら。
  朝日奈さんは、クラスの子とおしゃべり中だった。

  「朝日奈さん、進路面談の時間よ」
  「あ、そっか。ゴメン、ありがとね。ちょっくらいってくるかぁ〜」

  といいつつ、何も持たずに職員室へ飛んでいきました。先生の気持ちが分から
  なくもないかもしれない・・・。

  あ、そういえば、メグは進路相談1番だったっけ。帰り支度をしているメグを
  見つけたわ。一緒にかえろっと。

  「あ、詩織ちゃん」
  「よかった。まだいたんだ。メグ、一緒にかえらない?」
  「うん。いいよ」

  帰り道。久しぶりに二人で『ときめ後』に寄ることにしました。まだ進路相談
  が始まったばかりなのできらめき高校の生徒はあまり来ていないようです。も
  う少ししたらごった返すのでしょう。

  わたしはウィンナコーヒー。メグはお決まりのシナモンティー。空いているの
  でマスターも暇をもてあそんでるみたい。でもあと数十分したら戦場になるの
  よね・・・マスターひとりで大変かも。よくひとりで切り盛りできるわね。

  「なんだか詩織ちゃんとここでお茶するのってひさしぶりだね」
  「え?あ、そう言われてみるとそうだね」
  「詩織ちゃん、隣に住んでる高城君・・・だっけ?と一緒に帰ってるからなか
  なか一緒に帰れないんだもん」
  「・・・」
  「詩織ちゃん、付き合ってるの?」
  「え?」

  メグったらそんなこと聞いてくるなんて。驚き。というか、どう答えようかし
  ら・・・

  「朝も一緒に来てるみたいだし、付き合ったりしてるのかなって・・・」
  「ううん、幼なじみなだけよ。友達、って言うには無理があるかもしれないけ
  ど・・・もう10年以上仲良くしてきてるから一緒に学校きたりするのってあ
  んまり抵抗がなかったりするの」
  「ふうん、そうなんだ・・・随分と仲良くしてるみたいだから、付き合ってる
  んじゃないかって学校中のウワサだよ。詩織ちゃんって有名人だから」
  「そ、そんなウワサあるの?」

  初耳だわ。そんなウワサが立っているなんて・・・知らないのはわたしと武雄
  君だけだったのかしら・・・

  「そうだよ。詩織ちゃんと高城君って幼なじみだし、元々仲良かったじゃない?
  だから演劇部も一緒だってこともあって、付き合ってるんじゃないかって。そ
  れに行き帰りも一緒だからなおさら」
  「そうだったんだ・・・」

  ウワサって本人の耳には届かない仕組みになっているものなのよね・・・せっ
  かく朝日奈さんには黙っていてもらっているのに・・・かといってウワサはウ
  ワサだから、否定するわけにも行かないし。困っちゃったな。

  「メグ?」
  「ん?どうしたの?詩織ちゃん」

  わたしはメグに対して嘘をつけない。ちゃんと話しておこう。そう思ったの。

  「実は・・・」

             ☆              ☆              ☆              ☆

  わたしと武雄君が去年から付き合ってることを正直に話しました。だって、メ
  グはわたしの親友ですもの。武雄君も許してくれるわよね?

  「そうだったんだ・・・お似合いだよ。詩織ちゃんと高城君って」
  「そ、そうかなぁ」
  「うん。幼なじみだけあって息もぴったりだよ。うらやましいって思うもん」

  そうなんだ・・・喜んでいいのかな?

             ☆              ☆              ☆              ☆

  メグは3流企業に就職希望ということで頑張るみたい。お互いうまく行くとい
  いね、って言って別れました。

  夜、武雄君から電話が来たの。なんでも伊集院君と『ときめ後』へコーヒーを
  飲みに連れて行かれたらしいわ。でもわたしたちが帰った後に来たみたい。す
  れ違いだったみたいね。それにしても伊集院君から誘ってくるなんて面白いこ
  ともあるものね。

  あっ!あんまり珍しいことだったから、武雄君にウワサ話があるのを話すの、
  忘れちゃった。