<3rd_GRADE 第10章:January(3)> Mio's EYE 『湧きおこる想い(3)』

  今日、偶然と言うべきか、神社へ初詣に行った時に高城さんと出会い、ちょっ
  と話し込んでしまいました。

  しかし、そこで驚くべき事実を聞いてしまったのです。

  3年間、ずっと気になっていたこと・・・。受験の日、私を助けてくれた人が、
  高城さんだったなんて!

  私はベッドの上で静かに目を閉じながら考え事です。今日は勉強する気になれ
  ません。まだ気持ちがたかぶっています。お正月ですし、今日くらいはゆっく
  り休むことにしましょう。といっても実際問題、休めるわけではないのですが
  ・・・。

  長年の想いが私の中で爆発するかのようです。約3年前の受験の日の人が、高
  城さん・・・きっときらめき高校に合格して、この学校のどこかにいると思っ
  ていた人が、こんなに身近にいたとは・・・。

  3年間忘れることのなかった想い。いつか見つけたら、きっと私はその人に・
  ・・。だって、私を窮地から救ってくれた人ですから・・・

  変なセンチメンタリズムにひたってると思われても仕方がありませんね。現に、
  事実ですから。恋に恋してると思われても仕方がありません。それもまた事実
  ですし。私はちいさいときから奥手でしたから・・・なにかに対してあこがれ
  たりすることが非常に多いのです。そう、藤崎さんみたいに何事も積極的にな
  れるような人間になりたいと思ってたのですが、なかなかそうはいかないもの
  ですね。そうこうしているうちにもう18歳になろうとしています。私、成長
  していないのかもしれませんね。精神的に。

  いえ、それとこれとは話が別です。私自身の中で一番気になる人が、見つかっ
  たわけですから、気持ちが高ぶらないわけがありません。あしながおじさんを
  みつけたような、そんな気持ちになっている気がします。

  −−でも、見つけたからどうするの?

  そんな問いかけが私の心の外から投げかけられているような気がします。

  −−でも、見つけたからどうするの?

  そんなに何度もいわれなくても・・・

  −−でも、見つけたからどうするの?

  ・・・どうすればいいのでしょうか。私は、目的の人を見つけたからそれで満
  足ということなのでしょうか。自問してみます。

  実際に頭の中で考えている時間はかなり短い間なのでしょうが私の中では数時
  間にも及んでいる感じがします。結論は分かっているのです。分かっているか
  らその結論に至らないように思考を巡らせている・・・辛い思いをするだけで
  すから・・・。

  もっと簡単に言ってしまいましょうか。

             ☆              ☆              ☆              ☆

  高城さんのことが気になって仕方がありません。しかし、高城さんは今お付き
  合いしている人がいる・・・無論、藤崎さんなのですけど・・・。でも、私の
  心の中における高城さんの位置が大きくなろうとしているのです。

  ああ、どうしたらいいのでしょうか・・・私は・・・

  私は、好きになってはいけない人を好きになってしまったのでしょうか・・・
  でも、この想いはもう止められない・・・

  考え始めるともう止まりません。この3年間の思い出がめまぐるしく私の中を
  駆け巡ります。受験の日のこと。運動会のこと。クラブ合宿の朝練のこと。ク
  リスマスパーティーのこと・・・1年生の時だけでもこんなに思い出がありま
  す。

  いくら思い出があったとしても・・・高城さんは藤崎さんのものです。小さい
  時から思いつづけてきたであろう藤崎さんの想いに私なんかが勝てるはずがあ
  りません。私の想いはたった3年間。藤崎さんは10年、あるいはそれ以上。
  私なんかが太刀打ちできるはずもありません。いえ、太刀打ちするなんてそん
  なだいそれたことが出来るはずがありません。

  いいんです。私の一番気がかりだったことが解決しただけで。藤崎さんには幸
  せになってもらいたいですし・・・ずっとお隣同士でやってきて高校生になっ
  てやっと思いが報われたんですから。私の出る幕なんかあるはずがありません。

  ・・・出る幕?私は高城さんのことをどう思っているのでしょう?そこが肝心
  なことかもしれません。

  私は・・・高城さんのことを・・・