<2nd_GRADE 第9章:December(3)> Mio's EYE 『Cold』 クシュン。なんだか夜になって更に冷えてきました。暖かい格好してきてるけ ど寒気がします。パーティーも宴たけなわといったところです。 「未緒ちゃん、大丈夫?」 「あ、はい・・・平気です・・・クシュン」 沙希ちゃんはあんなに短いスカートはいて、寒くないのでしょうか。風邪ひい ちゃったのかしら・・・ あ、沙希ちゃん、友達が来てるならそちらにいってもいいですよ。私はちょっ とここで座っていますから。そういうと申し訳なさそうに 「ごめんね、ちょっとだけ挨拶してくるね!すぐ戻ってくるから!」 そういうと小走りに女の子達の輪に入りこんでいきました。私は・・・ちょっ と疲れちゃいました。というより・・・頭がぼーっとして・・・ はっ、と思ったときには既にパーティーも終わりのころでした。いつのまにや ら眠っていたようですね(気を失っていたのかもしれませんが・・・)隣に・ ・・沙希ちゃん? 「あ、未緒ちゃん、起きた?大丈夫?体、平気?」 心配そうな表情で覗きこんでいます。あっ、いつのまにやら沙希ちゃんも戻っ てきていたんですね・・・ 「え?す、すみません。寝てました?」 「う〜ん、なんか疲れきってたけど・・・本当に大丈夫なの?」 ちょっと休んだからか、からだは結構すっきりしています。元気になったのか しら。 「ちょっと、夜風にあたってきますね。そうすればすっきりすると思います」 「うん、でも、あんまりあたらないほうがいいよ。未緒ちゃんなんか風邪気味 みたいだし・・・」 「ええ、無理はしません」 そういいながら、外に出ていきます。去年の思い出がよみがえります・・・池 にかかっている話しの元での会話・・・高城さんから始めて本音を聞いたよう な気がします・・・ どうしてもその場所に行きたい。そう思って・・・ 1年ぶりにその場所へ。演劇部の仲間。同じクラスの友達。そしてよき友人・ ・・なのでしょうか・・・。 その場所にいると、そのときの記憶が蘇ります。私だけなのかもしれませんが。 橋の中央でひとり。じっとたたずんで・・・センチメンタルにもほどがある、 って感じなのでしょうか。でも、今はこうしていたい・・・ 「あっ!」 頬に冷たい感触。どうりで寒いと思ったら・・・予想通り雪が降ってきたんで すね・・・ホワイトクリスマス・・・はぁ・・・ ☆ ☆ ☆ ☆ 「未緒ちゃん!」 向こうからかけてくるのは・・・沙希ちゃん? 「んもう!、ダメじゃないの。ずっとこんなところでじっとしてちゃ。風邪ひ いちゃうじゃない!心配して来てみたら・・・」 「あっ、済みませんでした・・・でも、ここは思い出の場所なんです」 「えっ?」 「い、いえ・・・」 沙希ちゃんは肩をすくめて、 「んもう、いいから早く部屋の中に入らないと!風邪ひくだけじゃ済まないか もしれないでしょ」 あっ、そう言えば体調も良くなかったのに・・・こんなところでじっとしてい たら風邪、こじらせてしまいますね。ごめんなさい、沙希ちゃん。でも、今日 きたら一度はここに来ようと思ってたから・・・ 部屋に戻ると、パーティーは終わりに近づいていました。伊集院さんの終わり の挨拶が行われようとする直前。結構あの場所にいたんですね・・・ クシュン。 ああ・・・やっぱり風邪、ひいてしまったかもしれませんね・・・でも・・・ それでもあの場所には行っておきたかったのです。どうしてでしょうか・・・。 ☆ ☆ ☆ ☆ 「沙希ちゃん?」 「え?どうしたの?」 「今日・・・楽しかったですか?」 「え・・・うん。すっごく楽しかったよ、思った以上に楽しかったと思うなぁ」 「そうですか・・・それは良かった」 「未緒ちゃんはどうなの?楽しんだの?結局あんまり行動しかなったけど・・ ・」 私ですか?私は・・・ 「楽しみましたよ。他の人とはちょっと違うかもしれませんが・・・」 雪が降る・・・ 「ホワイトクリスマスだね」 「そうですね、ホワイトクリスマスですね」 「あたしも、いつかそんな人が現れるのかな・・・」 そんな沙希ちゃんのセリフに・・・ 「そんなひとが、私にも・・・」 クシュン。 「え?未緒ちゃん・・・もしかして風邪ひいちゃったんじゃないの?」 「え、ええ・・・そうみたいですけど、大丈夫です」 ピトッ。沙希ちゃんの手が私の額にあたります。 「えっ。すごい熱じゃないの!未緒ちゃん!」 「そうですか?ちょっと熱っぽいだけかと思ってたんですけど・・・」 んもう!なに言ってるの!すごい熱よ。と言うが早いか、沙希ちゃん、自分の 羽織っていたコートを私にかけます。 「い、いいですよ・・・そんなに着たら熱いです」 「でも!おうちまでなんだから我慢しないっ」 なんだか、もうすごく迷惑をかけているみたいです。 10数分歩いて自宅に戻ってきました。沙希ちゃんは私のことを送ってくれま した。 「本当にすみませんでした。ありがとう。沙希ちゃん」 「うん。それはいいから、早くおうちにはいってあったかくして寝てね。だめ よ夜更かししちゃぁ」 「は、はい。本当にありがとう。また・・・」 自宅に入るとお母さんが待っていました。風邪を引いてしまったことを話して すぐに布団に入ります。 熱っぽくてすぐには眠れそうにありませんね。 ・・・去年、橋の上での思い出・・・高城さん・・・藤崎さん・・・ いつのまにか寝てしまっていたようです。