<2nd_GRADE 第9章:December(2)> Takeo's EYE 『White Snow with Love』

  期末テストも終わり、高校生活2年目のクリスマスがやってきた。そういや去
  年は伊集院のパーティーに呼ばれていったんだっけ。

  ・・・っていうか、今年も呼ばれてるんだよな。学校じゃあんなに悪口言い合
  ってるのになんで誘ってくるんだ?ケンカ売ってるのかなぁ。まぁ、タダでう
  まいもん食べられるんだから文句は言えないか。どうせなら食べられるだけ食
  べて伊集院家の家計にダメージを与えてやらんと・・・

  はぁ・・・そんなこと考えてること自体小市民的だよなぁ・・・

  それにしたって、なんったって「あの」伊集院がよりによってこの俺をパーテ
  ィーに誘ってくるんだ?普段からあんなに小突いたり小突かれたり(いや、小
  突いてるのは俺だけだけど)してるのに。やっぱり、昨日の敵は今日の友、っ
  てやつかのかねぇ。ま、せいぜい食うだけ食って退散してやるとしようか。

  あ、電話だ。

  「もしもし、藤崎ですけど」
  「ああ、詩織か。どうした?」
  「武雄君もパーティー、誘われてるよね」
  「ああ、どういうわけか知らんが今年も誘われてる。凝りもせずに」
  「よかった。一緒に行かない?」

  ちょうどいいところに。ひとりであのデカイ門をくぐるのはどうも気になって
  いたところだ。

  「俺もよかったよ。ひとりであそこに行くのはどうかなぁと思ってたところだ
  から」
  「あ、そうなんだ・・・じゃぁちょうどいいね。えっと・・・武雄君、支度に
  どれくらいかかる?」
  「え?別にめかしこむわけでもないからすぐに終わるけど?」
  「じゃぁ、ちょっと早めに出てお茶でもしようよ、ね?」

  そうだな。じゃあ、詩織が支度終わったら迎えに来てくれよ、それじゃぁ。

             ☆              ☆              ☆              ☆

  詩織は30分くらいで支度を整え迎えにきた。ほとんど支度が終わってたのか
  な。相変わらずあんまり化粧も濃くない。化粧が濃いとなんか好きになれない、
  と一度言ってからほとんど化粧をしなくなった。どうして?化粧すればいいの
  に、と言うと

  「ううん、武雄君が好きじゃないって言うから、しないの」

  化粧してみたい年頃とかもあるだろうにどうして・・・って思ったりもするが、
  それ以来あまりその話題は出さないことにした。化粧したくなったら詩織も化
  粧するようになるだろう。そう思っていた。

  じゃぁ行こうか。といってもお茶する、と言ったらあそこしかない。

  カラン、コロン、カラン、コロン。

  「お、武雄・・・それと詩織ちゃん。あれ?どこかに行くの?」
  「あ、マスター。こんにちは。えっと、今日はクラスの友達のクリスマスパー
  ティーにお呼ばれしてるんです」
  「ほほう。それでそんなにめかしこんでるわけだね。綺麗だよ」

  詩織を見ると真っ赤な顔をしている。

  「ほら、照れてないで座った座った」

  伊集院の話しをマスターにしてやる。驚きのまなざしだ。

  「その子なら、こないだうちに来たかもしれないなぁ。髪の長い男の子だろ?」

  先週、お忍びだかなんだか知らないがずらずらとサングラスをかけたお供を連
  れて入ってきた集団の中心にいたのは、きらめき高校の制服を着た男の子だっ
  た。しかもしきりに『庶民の』を連呼しているので、マスターも気分が悪かっ
  たらしい。でも、なんだかんだでコーヒーの味に満足して出ていったので、最
  終的にはマスターの印象はプラスで終わったみたいだ。

  「そうそう。まさにそれが伊集院だ」
  「確かに金持ちの坊ちゃんっぽいなぁ。ていうかすごいね。あんな人が世の中
  にはいるんだねぇ」

  しみじみするマスター。俺も始めて奴を見たときそう思ったよ。学校の帰り、
  無理やり一緒に帰らされて途中の公園でつまらない自慢話を聞かされたことも
  あった。ダイヤモンドの漬物石の話なんか別に俺は聞きたくもなかったのに。

  ひとしきり伊集院の話題で盛り上がって、さぞかし奴も喜んでいることだろう
  な・・・おっと、そろそろ時間がきたみたいだ。出かけないと開始時刻に遅れ
  ちゃうな。遅れたらまた伊集院がうるさそうだしな。

  「詩織、そろそろ出かけようか」
  「え、あ、うん。そうね、行きましょう。あ、マスターごちそうさま」
  「ああ、詩織ちゃん、武雄も、楽しんでおいで。せっかくタダで飲み食いでき
  るんだからな」
  「ふふふっ。はーい」
  「あ、そうだ。夜は寒くなるから気をつけろよ」

             ☆              ☆              ☆              ☆

  「うわ、なんかもう日が暮れる。まだ夕方前なのにね」
  「そうだな。寒いな。12月も終わりだし・・・」
  「そう言えば、今日、夜、雪が降るんですって」
  「へぇ。だからこんなに寒いのか」

  吐く息が白い。夜はもっと冷えこむんだろうなぁ・・・