<2nd_GRADE 第9章:December(1)> Mio's EYE 『Merry X'Mas 19XX』

  もう冬。

  この間入学したばっかりだと思っていたのに、もう高校生活の半分以上が過ぎ
  去ってしまいました。なんだか時が過ぎるのが早いです。高校生になっていろ
  いろな事を経験したからでしょうか。あれよあれよという間に過ぎ去ってしま
  いましたね。まだ1年以上有りますが、なんだかもう十分という感じがしなく
  もないですね。

  12月に入り期末試験も終わり・・・冬休み。演劇部は自主トレーニングをか
  かさないことを条件に、オフです。ゆっくり出来るということですね。ここ数
  ヶ月一生懸命だったし・・・。

  そして、招待状。去年も来ましたが、伊集院さんのうちでパーティーがあるよ
  うです。これって毎年やっているのでしょうか。すごくお金がかかってそうな
  パーティーなのに・・・と考えてしまう私は貧乏性なのかしら。

  お断りするのも失礼でしょうから、出席にして・・・

  「みーおー。電話よー」

  お母さんの声が。電話・・・誰からでしょうか。

  「あ、未緒ちゃん?虹野ですけど」
  「あ、沙希ちゃんちょうどいいところに」
  「え?どうしたの?」
  「ええ・・・多分同じ用事だと思いますけど・・・伊集院さんの件ですよね?」
  「えっ!未緒ちゃん、どうしてわかるの?」

  こういうところを素直に喜んでくれる沙希ちゃんってやっぱりかわいいですよ
  ね。別に難しい話じゃなくてちょっと考えれば分かる話なのですが。

  「うん・・・どうしようかなぁ、と思って。ほら、あたしってドレスとか持っ
  てないから・・・」
  「普段着だって全然かまいませんよ。去年も普段着で来てた方もいましたし」
  「あっ、そうなんだ。みんなすごいの着て行くのかと思ってたから」
  「ふふふ。そんなことないですよ。わたしだって普段着に毛が生えたような格
  好していきましたからね。おしゃれする人はおしゃれしますけど・・・」

  沙希ちゃんはなんだか納得してくれたみたいですね。去年は風邪ひいてしまっ
  たとかで行けなかったとのこと。去年の様子を説明してあげると・・・

  「え、そんなにすごい人数が来るの?あたし、同じ学年の人くらいしか呼んで
  いないのかと思ってたんだけど」
  「ええ、私もそう思っていたんですけど、軽く数百人は来ていましたよ。なん
  でも芸能人とかも来てたとか。私はよく知らないんですが・・・」
  「ふぅん、そんなパーティーに行っちゃっていいのかな。なんか場違いな気が
  してきちゃったな」
  「じゃぁ、一緒に行きましょうか。そうすれば沙希ちゃんも安心でしょ?」
  「え?いいの?誰かと約束してたりしてないの?」
  「え、ええ。特に」
  「ホント?よかったぁ。じゃぁ一緒に行こうね」

             ☆              ☆              ☆              ☆

  当日・・・朝。暖かい日差しが差しています。もうすぐ新年を迎えるというの
  がうそだと思えるくらい暖かい日になりそうですね。

  沙希ちゃんが来るまでにはまだ時間がいっぱいありますね。ちょっと図書館に
  行ってきましょうか。

  「未緒、出かけるなら暖かい格好していきなさい。外は寒いですからね」
  「はい。でも、今日は暑くなるって言ってたし・・・」

  クシュン。
  ・・・やっぱり、暖かくしていった方が良さそうですね。十分着込んで出かけ
  ます。

  でも、図書館って暑いんですよね。場所にも寄るのですが、温風の吹き出し口
  に近いような席ではまるで夏のように暑いのです。逆に夏だと、冬のような格
  好をしていく必要があるのですが・・・。

  今日はまさに夏の席に座ってしまいました・・・温風がもわもわ出てきて非常
  に暑いです。かといって、他の席は空いていません。ちょっと羽織っているも
  のを脱いで、また読みふけります・・・

  あっ、もうこんな時間。帰らないとそろそろ沙希ちゃんが迎えに来てしまいま
  すね。

             ☆              ☆              ☆              ☆

  うちに戻ってきて、一息ついて。シャワーを浴びます。図書館は夏状態でした
  ので汗が出てしまいました。早くしないと、沙希ちゃん来てしまいますね。

  クシュン。お風呂場で。
  ・・・風邪、ひいてしまったのでしょうか・・・確かにちょっと寒気もします
  がお風呂に入っちゃえば何とかなるでしょう。

  ピンポーン。

  あっ。沙希ちゃんがきたようです。私も支度が終わり出かける準備はOKです。

  「こんばんは、沙希ちゃん」
  「はーい、未緒ちゃん・・・」
  「ど、どうかしました?」
  「えっ?い、いや。なんでもないよ。なんかすごくかわいいな、と思って」

  実は去年と同じ格好です。そんなにドレスなんか持っていませんもの。別にそ
  こまで気にするつもりもないですしね。沙希ちゃんは、いつものスパッツとは
  違い、かわいい薄青のフレアスカート。

  「沙希ちゃん、寒くないんですか?」
  「え?そんなことないよ。学校行くときだってみんなスカードはいてるじゃな
  い」
  「そ、それはそうですが・・・いつものより結構、短いですよ?」
  「あ、そ、そう?やっぱり。ちょっと短いかなぁ、って思ったんだけど・・・
  いいや、ってはいてきちゃった」
  「いえ、でもすごくかわいらしくていいです。沙希ちゃんらしいおしゃれのし
  かただと思いますよ」

  うん、ありがとう。と沙希ちゃん。そろそろ出かけましょうか。

             ☆              ☆              ☆              ☆

  伊集院さんのお宅の門の前でチェックを済ませて。パーティー会場へ。去年と
  同じか、それ以上の賑わいを見せています。

  「・・・み、未緒ちゃん・・・なんか、あたし、恥ずかしいよ。みんなちゃん
  とした格好で来てるじゃない・・・」
  「そんなことないですよ。ちゃんとしてない人もいますから。ほら」

  と指差した先には・・・

  「んもう!未緒ちゃん、きぐるみ来てる人じゃないのよ、あれ」
  「ふふふっ」
  「いじわる〜」

  指差した先の人は最近はやっている「殺人コアラ」のきぐるみをかぶった人。
  ちょっと沙希ちゃんにかわいそうなことしちゃったかもしれませんね。でもち
  ゃんと本当に普段着の人もいますし気にしないでくださいね。

  「あっ、ホントだ。仲間がいたよ。よかったぁ」

  沙希ちゃんはお仲間を見つけたみたい。本当によかった。

  不意に照明が薄暗くなり、壇上が照らされます。パーティーが始まるようです
  ね。