<2nd_GRADE 第6章:September(1)> Mio's EYE 『古都への誘い』

  夏休みも終り、2学期が始まります。学校の友達とも再会。そして2学期が始
  まるとすぐにあるイベントが、修学旅行です。

  今年はオーソドックスに『京都・奈良』だそうで、私としては安心しているの
  ですが・・・というのも去年などは『沖縄』とかで、飛行機に乗らなくてはい
  けないし、9月とは言え暑いだろうから大変だなぁ、と思っていたのです。

  京都とか奈良ならならいろいろと回りたいところもあるし、すごくよかった。

  4泊5日で行くのですが、3日目と4日目には個人行動の日と言うのがあって、
  その日は2人一組で行動しなくてはいけないのです。私、誰といこう・・・宛
  てもないのですが・・・もう修学旅行前日だと言うのに・・・

  などと言っているうちに当日になってしまいました。誰ともグループを組めな
  いまま当日を迎えてしまうことになったのです。そんな自分に腹が立ちます。

  1日目は移動日。クラス単位での行動です。二条城など京都駅周辺の寺社仏閣
  を回りました。やっぱりいつ来ても趣があります。でも新幹線でもずっと座っ
  ていたし、京都についてからはいっぱい歩いたので。すごく疲れました。

  夜。就寝前の自由時間。私はホテルのロビーで読書。でも頭の中では、明日は
  ちゃんと誰かを誘って自由行動しよう、と心に決めていた時でした。私を呼ぶ
  声がします。

  「あ、未緒ちゃん!」
  「あ、沙希ちゃん。どうしたの?」

  沙希ちゃんは急いでこちらに駆けて来たようで息を切らせてハァハァしていま
  す。どうしたのでしょうか、そんなに急ぎの用事?

  「あ、あのね、修学旅行の件なんだけど・・・」
  「はい、どうしたの?」
  「あ、一緒にいける?個人行動の日」
  「ええ。誰もいなかったのでどうしようかと思っていたところです」
  「ホント!よかった!」

  でも沙希ちゃんだったら他の友達もいっぱいいるのでは?と思っているのです
  が・・・そのことをたずねて見ると

  「うん、でも、京都とか奈良とかならやっぱり詳しい人と一緒に行ったほうが
  有意義になるじゃない。折角いくんだから少しは勉強しないとね、って思って。
  私の周りでそういう人って、未緒ちゃんくらいしかいないから」

  そんな・・・私だってそんなに詳しいわけじゃないですよ。下調べをしたりし
  て行くから、詳しいように見えるだけで・・・

  「でも、誘ってもらえてよかったです。自分から誘うのもなんだか恥ずかしい
  し・・・どうしようかと思っていたんです」
  「うん、それもあって未緒ちゃんのところに来たんだけどね。クラスが違って
  も自由行動のグループはOKみたいだから」

  私の数少ない友人の虹野沙希ちゃんは2−A。私は2−Cなので、なかなか一
  緒に何かをする機会がないのです。こういうことがないと・・・

  「じゃぁ、明日ここで待ち合わせをしようね。明日は寒いらしいからちゃんと
  暖かい格好をしてね」
  「あ、寒いんですか?わかりました。ありがとう。それじゃぁそろそろ就寝の
  時間ですね」
  「うん。おやすみ。未緒ちゃん」
  「おやすみなさい。沙希ちゃん」

  よかった・・・明日のパートナーが決まって・・・

             ☆              ☆              ☆              ☆

  すごく疲れていたのか、すぐに眠ってしまったようです。朝早く起きてしまい
  ました。でも部屋から出ると先生に怒られそうなので布団の中でゆっくりとま
  どろんでいます。どこに行きましょう・・・三十三間堂もいいですね。銀閣寺
  などの庭のあるお寺もいいですね。沙希ちゃんはどういうのがいいのでしょう
  か。

  うん、やっぱりちょっと歩くけど、哲学の道をあるいて南禅寺、銀閣寺を回る
  ことにしましょう。川のせせらぎを聞きながらゆっくりあるくのがいいですね。
  ちょっと疲れるかもしれませんが、頑張ることにしましょう。

  そうこうしているうちに、起床の時間です。なんかすがすがしい朝。久しぶり
  に気持ちよく眠れました。

  朝の点呼も終って、今日は自由行動日。
  みんな気の知れた仲間同士で出発していきます。やっぱり高城さんは藤崎さん
  と行くみたいですね・・・誰も気にも止めないようですが、私と朝日奈さんだ
  けは違っていたようです。ちょっと朝日奈さんと目が合ってしまったのですが、
  朝日奈さん、ニヤリとしてこちらを見ていました。なんだか恐いですね。

  ・・・沙希ちゃん、遅いですね。ロビーで待ち合わせていたはずなのに。なに
  かあったのでしょうか・・・ちょっと心配です。沙希ちゃん思った以上に頑張
  り屋さんだから。

  「ごめんね未緒ちゃん〜」

  沙希ちゃんが駆け寄ってきました。ただ遅れただけみたいですね。

  「本当にごめんね。なんか部屋の娘が気持ち悪くなっちゃったみたいで様子を
  みていたの」

  沙希ちゃん、優しいですからね。でも沙希ちゃんが悪くなったわけじゃなくて
  よかった。

  「じゃぁ、行きましょうか。もう平気なんですか?その娘は」
  「うん、大丈夫。さぁ行きましょう」

  ホテルを出て、一路東山へ。

  「今日はどういうコースなの?未緒ちゃん」
  「えっと、沙希ちゃんがどういうコースがいいかわからなかったので一応見栄
  えのいい庭園をメインに廻ろうと思っています」
  「ふぅん・・・」

  沙希ちゃんはガイドブック片手に熱心に私の話を聞いてくれています。

  「まず哲学の道がメインですね。あそこをゆっくり散策しながら近くにあるお
  寺を廻っていきます。それで終着地は『慈照寺』です。でも、全体目的地の奈
  良の奈良公園まで行くのがちょっと大変ですけどね」
  「え?『なにじ』?」
  「ははっ。『じしょうじ』です。要するに銀閣寺のことですよ」

  へぇ・・・とガイドブックで探しているみたい。

  「本当だ慈照寺って書いてあるね。銀閣寺っていうのは?」
  「通称でしょうね。金閣寺だって、『鹿苑寺』っていう名称がつけられている
  し三十三間堂も『蓮華王院』って名称があるんですよ。でも一般的には通称で
  呼ばれることのほうが多いようですが」
  「ホント、未緒ちゃんってすごいんだね。なんかいろんなこと知ってるのね」
  「いえ、そんなことはないです・・・昨日ちょっとガイドブックを見ただけで、
  私もあんまり知らないんですよ」
  「でも、調べられるってすごい!」

  ・・・そんなにすごいすごいって言わないでください。なんか恥ずかしいです。

  電車とバスを乗り継いで、哲学の道入り口へ到着。

  沙希ちゃんとゆっくり散策しながらお寺めぐり。なんか沙希ちゃんといると心
  がうきうきします。沙希ちゃんの人柄のおかげでしょうね。沙希ちゃんの元気
  を分けてもらっているみたい。

             ☆              ☆              ☆              ☆

  目的地の慈照寺に着くまでにはもう日が西に向かっているところでした。奈良
  公園に早く行かないと集合時間に間に合いませんね。

  「さぁ、急ぎましょうか」

  一路奈良へ。

  とりあえず、間に合いそうです。よかった・・・