<2nd_GRADE 第4章:July(3)> Yumi's EYE 『たのしいでえとは恋の味』

  やったぁ。先輩とでえとだっ。

  あー、もううきうき。どうしようかなっ。海だよ、海っ。憧れの高城先輩と海。
  もうどーしよう。

  はっ。そんなこと言ってる場合じゃないんだった。早くしたくしていかないと
  遅れちゃう。先輩待たせたら失礼だもんね。

  「おーい、優美。なにやってんだ?」
  「きゃー、エッチ痴漢変態ー。出てってよ!」

  いきなり人の部屋に入りこもうとするお兄ちゃんを押し返すようにして追い出
  しちゃった。当たり前よね。乙女の部屋に入りこもうとする方が悪いのよね。

  髪型もオッケー。水着も用意した。へへっ。自然と顔が崩れちゃう。しょうが
  ないよね。

  さてと、そろそろ行こうかな。

             ☆              ☆              ☆              ☆

  今日は海ビヨリってヤツかしらね。適度に暑いし適度に日も出てるし。お日様
  も出すぎてると焼けちゃうからね、肌が。乙女としてはお肌にも気を使わない
  と。

  ・・・海の家の前で待ち合わせてたはずなんだけど・・・先輩、こないなぁ。
  もうちょっと待ってみようかな。

  「優美ちゃん?」

  そ、その声は!

  「あっ、先輩っ!待ちくたびれました!」
  「・・・」
  「遅刻だよっ」
  「・・・え?時間通りだけど」

  優美も時計を見る。え!?えっ!?優美の時計、進んでるみたい・・・あっ!

  「な、なに?突然に」
  「そうだ、遅刻しちゃいけないと思って時計30分進めておいたんだった。あ
  あっ!なんか損しちゃった」
  「い、いや、そんなことはないと思うけど。時間どおりにくる乃は悪いことじ
  ゃないしね」

  や、やだ。先輩ったらやっぱり優美には優しいんですね。

  「そうですね、よかったー。それじゃぁ優美、着替えてくるね」

             ☆              ☆              ☆              ☆

  「優美の水着、どうですか?」

  ちょっとドキドキ。先輩、なんて答えてくれるかなぁ。

  「え?い、いいんじゃない。かわいくて」

  かわいい?えへっ。照れちゃう。でも・・・

  「せっかくセクシーな水着を選んできたんだけどなぁ。セクシーじゃないです
  か?」
  「い、いや・・・唐突に言われてもこっちも困るよなぁ。やっぱり優美ちゃん
  は『かわいい』、って言う方が似合ってるよ。あと数年したらセクシーになる
  と思うよ、う、うん」

  え?本当ですか?やっぱりそうかなー。優美もそう思っていたんです。

  「先輩、思ったより筋肉ついてるんですね」
  「そ、そう?」

  先輩のはだか。なんかキレイ。かっこいいわっ、やっぱり。

  「うん。なんか運動してる人みたい。優美もバスケット部にはいってるけど、
  そんなに筋肉つかないよ」
  「演劇部って結構体力使うんだよ。劇団とかとちがって大道具とか小道具とか、
  照明とか、全部自分で用意しなきゃいけないからね。支度も自分らでやるんだ
  よ。結構重いから筋肉つくのかもね」
  「そうなんですかー」
  「そうなんだよ」

  先輩って演劇もやって筋肉もついて・・・やっぱりカッコいいっ!

  「先輩、泳ごうっ!」
  「あ、ああ・・・」

             ☆              ☆              ☆              ☆

  「はぁ・・・優美ちゃんはしゃぐのはいいけどまだ泳ぐのかい?」
  「せんぱーい。もう疲れちゃったんですかぁ?なんか元気ないなぁ」
  「優美ちゃんが元気すぎるんだよ・・・ごめん。ちょっと休憩」
  「はーい。じゃぁ優美ひとりで遊んでるね」

  じゃぁちょっと遠くまで泳ぎにいっちゃおうかな。