<2nd_GRADE 第4章:July(2)> Takeo's EYE 『強引と突然と新たな出会いと』 期末テスト。 ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ やっと終った。とりあえず、可もなく不可もなくといったところかな。本当は それじゃダメなんだけど、まぁ万年赤点の好雄よりはマシってもんだろう。好 雄といえば・・・ 今週の日曜日か・・・どうすればいいんだろうなぁ。俺。 なんだか突然電話してきて海行きましょう、とかいわれて、待ち合わせ時間も 決められちゃって。行かないわけにも行かないよな。針千本・・・恐いし。あ の子ならやりかねないしな。といったって、一度しかあったことないんだぞ、 彼女と。それに、そういうのって『デート』っていうんじゃないのか?詩織に どう説明する? どうすればいいんだろうか。俺は。 ふと思いついた。 そうか、奴なら解決策を持っているかもしれない。 ピッポッパッポッ。 「ハイ、朝日奈ですけどー」 「あ、高城といいますが、朝日奈さんいますでしょうか」 「え?高城君?ああ、詩織の『カレシ』ね。ナイスタイミング。出かける前で よかったね。で?どうしたの?」 『カレシ、カレシ』ってうるさいなぁ、コイツは。まぁこちらが下手に出ない とダメだしな、仕方ないか。反論はよそう。 「ちょっと折り入って相談があるんだけど・・・」 「相談?悩める乙女心を知りたいってことね?」 「・・・まぁ当たらずとも遠からずだな」 「う〜ん、いいよ。でも今日はちょっと用事が入っちゃってるから。明日なら バッチグーね」 「そうか、明日か。うん、それでいいよ。どこかで待ち合わせるんだけど、ど こがいい?」 「そーねー。無難に『ときめ後』でいいんじゃない?今回は特別にビッグパフ ェで相談にのってあげるわ」 ちっ、足元見られてるのか、やっぱり。まぁビッグパフェなら安いもんだろ。 「ああ、わかった。じゃぁ明日1時に『ときめ後』で」 「OK、それじゃぁねー」 ブチッ。 なんてせっかちなんだ。そんなに忙しいものなのかなぁ。彼女は。 ☆☆☆ 翌日 ☆☆☆ 土曜日。日曜は目前に迫っている・・・どうすればいいのやら。 特段何をするでもなく、着替えて『ときめ後』へ向かう。あぁ・・・叔父さん になにか言われるのかなぁ、と思いながらドアを開く。 カラン、コロン、カラン、コロン 休日なのでやはりすいている。朝日奈はまだ来てないようだな。さすがに遅刻 魔・・・と思ったが。 「はーい。遅いじゃないの。ほら、さっさと座りなさいよ」 なんと、既に来ていた。あっけに取られる俺をよそにカウンターでは叔父さん がニヤニヤとしている。大体の事情はわかってるから好きにしろ、とでもいい たげな顔つきだ。まぁその方が俺としてもいいんだけど。 「随分早いじゃないか」 「え?まぁね。情報が絡むとなれば放っておく朝日奈さんじゃないのよ」 「・・・」 「ましてや今をときめく『藤崎詩織のカレシ』からの相談じゃ、ただ事じゃな いものねぇ。もう聞く前からドキドキしちゃう。昨日なんか2時間しか眠れな かったんだから。期待を裏切らないでね」 俺・・・帰ろうかなぁ。こいつに相談を持ちかけたのは間違いだったかもしれ ない。さっさと適当に相談して帰るか。 「いいかげんな相談を持ち掛けないでね。親身になって相談受けてあげるから ね。ほら。座りなさいって」 言われるがままに席につく。なんというか、ペースに乗せられているようだ。 まぁそれも仕方がないか。いまここで相談に乗ってもらえそうなのはコイツし かいないんだから。マスターにコーヒーを頼むと、もう体を乗り出してくるよ うに朝日奈が口を開いた。 「で?で?相談事はなに?やっぱり恋の悩み?ドーンと負かせてちょうだい!」 ・・・「負かせて」?「任せて」だろう。微妙にイントネーションがおかしい 気がするが、それはそれで彼女の持ち味なんだろう。ここはすべてを委ねるこ とにした。 「それが・・・」 突然のデートの誘い。強引にきられてしまったこと。しかもそれが好雄の妹だ ということ。デートに行くべきか行かざるべきか・・・ 「ふぅん・・・」 腕を組みながら朝日奈はうなづいている。なんというか一応真剣な表情だ。 「で、高城君としてはその子と付き合う気はあるの?」 「・・・」 「二股はいけないわよ、やっぱり」 「・・・」 ・・・返すことばがない。こいつに話したのはやっぱり間違っていたのだろう か。 「付き合う気があるわけないだろ?」 「あっ、そ」 そう言うが早いかメモを取りだしなにやら書きこんでいる。なんか変なことに 使うんじゃないだろうなぁ・・・と思ったが口にするとまたうるさいので喉も とで飲み込んでおくことにする。 さすがの俺もしびれを切らした。 「で?どうすればいいと思う?」 朝日奈は考え腐ったように腕を組む。ホントに考えてるのか?コイツ。 「そうね、デートしたら?」 「はぁ?」 「『はぁ?』じゃないわよ。デートしたら?って言ったの。聞こえなかった?」 結論はそれか。 「で、どうしてそんな結論になったのか聞きたいんでしょ?」 ・・・顔に出ていたか。仕方なく俺はうなづく。 「とりあえず1回デートしてその時に告白させちゃうか、自分からきっぱり言 っちゃえばいいのよ。付き合ってる人がいるからだめだ、って」 「引き下がらなかったら?」 「バカねぇ。引き下がらせるのがアンタの狙いでしょ?気合で何とかするのよ」 「・・・」 確かに間違ったことは言っていない。 明日に迫ったいま断って印象を悪くするのもまずいだろう。 「だまされたと思ってやってみなって」 「他に方法もなさそうだしな・・・」 「ほかならぬ恋の相談役、朝日奈夕子ちゃんが言うんだから間違いなしよ」 今回は信じてみるか。 相談料として、ビッグパフェをおごってやると上機嫌でそれを平らげる。2杯 目を催促しそうな雰囲気だったので、さっさと帰ることにした。しかし、本当 にデートしちゃっていいのだろうか・・・気になって仕方がない。