<2nd_GRADE 第2章:May(1)> Shiori's EYE 『Here We Go To Aqualium.』 もう、武雄君に告白してから・・・半年が経とうとしています。なんだか長い ようで短かった半年間。これからもずっと続くといいな。 5月にもなるとちょっとづつ暑くなる季節。冬の寒さも残っているし、夏の暑 さも残っていたりする。季節の変わり目。風邪には気をつけないとね。 今日はゴールデンウィークの中日。連休の間の学校。これほどつまらないもの はないわよね。でも、武雄君と学校に行けるし、ちょっとは楽しいかな。 いつものように武雄君を起こしに行って(そうそう、結局4月の始業式の一件 以来やっぱりわたしがいつも起こしにいっているの)、学校に行って・・・。 お昼休み。自分の席で読書。 「おい、詩織」 「あ、武雄君・・・どうしたの?」 わたしは首を後ろに回して答えます。武雄君は後ろの座席に座っています。え? 武雄君は違うクラスじゃないかって?それはそうだけど・・・なんか幼なじみ だしみんな認めてくれているみたい。本当はそれだけじゃないのに・・・ふふ っ、わたしと武雄君だけの秘密。 「明日、暇か?」 「え?う、うん特に用事はないけど・・・?なあに?」 「い、いや・・・」 ガサゴソと武雄君は制服のポケットから紙片をとりだしました。 「これなんだけどさ」 わたしに手渡します。見てみると・・・ 「『きらめき水族館オープン記念!イルカショー招待券』?どうしたの?これ」 そのまま読み上げちゃった。 「そうなんだよ」 武雄君曰く、喫茶店のマスター(武雄君の叔父様ね)が事情通らしく、オープ ン前のセレモニーの招待券をもらってきたらしいんだけど、叔父様曰く「俺が もらったところで一人でいけるはずもないだろ?それに、こんなオヤジが水族 館に行ったってイルカだってたのしかないだろうよ。ほら、武雄の隣の娘を誘 って行ってくればいいじゃないか」とのこと。 「確かに、叔父さんには似合わないかもしれないからなぁ」 「ふふっ、そうかもね。でも女の人と二人で行けば別におかしくないと思うけ どな」 「え?じゃぁ、詩織、叔父さんと行くか?俺行かないから」 「・・・どうしてそういうこというの?」 武雄君は頭をかきながら、 「悪い悪い。冗談だよ。こっぱずかしいじゃん、こういうのって。これでも随 分照れてるんだぜ」 あ、そうか。武雄君、デートに誘ってくれたんだ。気づかないわたしもバカね。 「うん、行こう。明日なんだよね?」 「お昼からくらいだから、帰りがけにマスターんところへ寄っていくか」 「そうね。お礼もしなきゃいけないからね」 デートね。なんか久しぶりかも。そんなことないか。毎日一緒に学校にいって るもん。毎日がデートかもしれないわよね。 「じゃぁ、どうしようか、明日」 「武雄君のうちに呼びに行く。10時くらいでいいの?」 「そうだな。ショーは13時だからそれまでゆっくり出来るしな。じゃぁ悪い けどそうしてくれる?」 「うん」 キーン、コーン、カーン、コーン あ、お昼休み終っちゃった。 そして、お昼の授業はほとんど手につきませんでした。自分でも不思議なくら い。武雄君から誘ってくれたのがすごく嬉しかったんでしょうね、わたし。な んだか始めてのデートのときみたい。 始めてのデート? 始めて武雄君とデートしたのっていつなのかしら?もちろん、1月15日が始 めてってわけじゃないのよ。2人っきりで遊んだりしたことは何回もあるんだ し・・・2人っきりでちゃんとしたところへ遊びに行ったことって・・・あっ たのかしら。 授業中であるにもかかわらず、考え事。わたしは無意識に頬杖をついていたよ うです。 「で、この問題だが・・・ちょっと難しいぞ。藤崎。答えられるか?」 ・・・う〜ん、小学生の時かしら・・・中学生だったかな・・・いや、もっと 前で幼稚園のころ・・・ 「藤崎!聞いてるのか?」 横に座っているメグ(え〜っと、わたしの親友で美樹原愛ちゃんのことね)が わたしをつついてきます。 「詩織ちゃん、前、前」 「えっ?」 はっ、となって前を見るとちょっとご機嫌斜めの先生がこちらを見ています。 どうやら指されていたよう。考え事に夢中で全然気づかなかった。ああっ、失 敗しちゃったな。 「はい、す、すみません。聞いていませんでした」 先生は不思議そうな顔でこちらを見ています。 「ほう、そうか。藤崎が授業を聞いていないってこともあるんだなぁ。まぁ、 たまにはそういうこともあるだろう。で、どうだ?この問題、出来るか?」 ちょっと応用の利いた数学の問題です。わたしはやや悩みましたたが、なんと か解く事が出来たみたい。とりあえず面目躍如ってところかしら? ・・・といっても実は昨日予習したところがたまたま出たから出来ただけで、 そうじゃなかったらきっとできなかったでしょうね。危ないわ。 そんなこんなで放課後。自宅に戻ってきて・・・お風呂。さっぱりしたところ でちょっと勉強。そしてベッドの中へ。そして考え事。 武雄君と始めてのデート・・・いつだったのかしら・・・ 考えているうちに眠ってしまったようです。