<2nd_GRADE 第1章:April(3)> Mio's EYE 『Home Room』

  キーン、コーン、カーン、コーン。

  予鈴がなったようです。

  まだ40%くらいの座席しか埋まっていません。でも5分後にはみんなそろっ
  ているのですから不思議ですね。

  今日は新年度。新学期。2年生ですね・・・私も先輩になってしまうのですね。
  私なんかが先輩に・・・なれるのでしょうか?

  「あ、如月さんじゃない。同じクラスだったんだ」

  声のする方を向くと・・・高城さんが後ろで立っていました。

  「あ、おはようございます。今年も同じクラスですね。よろしくお願いします」
  「あ、ああ。こちらこそよろしく。3年間同じクラスか・・・」
  「ええ、そうですね」

  きらめき高校では2,3年ではクラス替えをしない変わりに理系文系で分かれ
  て授業を受けたりするので1年中同じ教室にいるというわけではありません。

  「如月さんは?やっぱり文系の道を進むんだよね」

  ふと高城さんが質問します。最初の日は座席自由なので、私の右隣にドシっと
  腰掛けています。

  「え、ええ。一応」
  「一応?一応じゃないんじゃない。如月さんの場合、さ」
  「そんなことないですよ。2年生の授業でもしかしたら理系に目覚めてしまう
  かも知れませんから・・・」

  高城さんはちょっと考えた末、笑い出していました。

  「あっはははは・・・あ、ごめんごめん。笑っちゃった」
  「何がおかしいんですか?」

  私は聞き返します。私だってもしかしたら理系に目覚めるかもしれないのに。

  「いや・・・如月さんが白衣着てバリバリ夜も寝ないで研究している姿を想像
  したらちょっとおかしくなっちゃってさ・・・ごめん。でも如月さんは文系だ
  よ。理系に目覚めるなんて絶対にないって。あれほど本を一生懸命読んでいて、
  シェークスピア作品ををこよなく愛している如月さんがいまさら理系に目覚め
  るはずがない、ってそう思ったから笑っちゃった、ってのもあるな」

  あ・・・高城さん、私以上に私のことをよく知っているみたいですね。その通
  り、私はきっと理系に目覚めることはないでしょう。

  ザワザワザワ・・・

  何やら騒がしいですね。後ろの扉から大人数が入ってきます。男の子の集団?
  いえ、その中心に女の娘が。あれは・・・

  「鏡  魅羅(かがみ  みら)さんだね」

  武雄君が私に教えてくれました。あの娘が・・・ファンクラブまであると言う?
  確かに周りには男の子を従えているように見えますが・・・

  「なんでも、ファンクラブはあるけど、その中に本命はいないんだって」
  「本命?」

  私は聞き返しました。

  「本命ってのはだな・・・うーん、恋人にしたい第1希望ってこと」
  「ああ、そういうことですか・・・」

  あれだけ男の子に囲まれていて本命がいないのですか・・・では、なんであの
  男の子達は鏡さんについていっているのかしら・・・不思議ですね。

  あ、先生が来たようです。
  私の高校2年生の始まり。頑張らなきゃいけませんね。