<2nd_GRADE 第1章:April(2)> Shiori's EYE 『A Typhoon Girl』 そして久しぶりに見る風景・・・きらめき高校、母校の正門が見えてきた。 今日から2年生。頑張らなきゃ。 「高城さん」 どこからか武雄君を呼ぶ声がします。わたしと武雄君は声の主を探すと・・・ 「高城さん・・・ですよね?」 声の主はわたしたちの目の前にいたみたい。栗色の髪の毛(でも脱色したって わけじゃなくて、地毛みたいね)を黄色のリボンでちょこっと縛った、背が低 めの女の娘です。どうやら、制服を見る限りでは、同じきらめき高校の生徒の ようです。 「???。あ、ああ。高城だけど。君は?」 「さて、わたしは一体誰でしょう」 武雄君は悩んでいる様子。知り合いなのかしら?でも武雄君は全然覚えがない みたい。え?わたしの知らないところでだれか他の娘と・・・?そんなこと・ ・・ないよね。さっき、わたしだけを見ててくれるっていったもの。 目の前の謎の女の娘はしびれを切らしたのか、ちょっとイライラ気味。なんで イライラしてるのかしら。 「ブブー、制限時間終了です。わたしは・・・」 「おい、優美、なにやってんだ?こんなところで?あれ?武雄じゃん」 そこに現れたのは、武雄君の親友(って本人は言ってるけど・・・武雄君はど う思っているのかしらね)の早乙女好雄君。結構な情報網を持っているらしく てそのネットワークの大きさは朝日奈さんに匹敵すると言われているわ。 「よ、好雄か。久しぶりだな」 女の娘は好雄君の方を向いて・・・ 「あ、お兄ちゃん」 「お、お兄ちゃん?」 わたしと武雄君はそろって同じことばを口走ってしまったわ。 「え?武雄、話したことなかったっけか?俺の妹だぜ」 女の娘はぴょこんとお辞儀をする。 「早乙女優美でーす。よろしくおねがいしまーす、高城先輩?」 武雄君はちょっと考え込んでいたみたいだけど・・・ 「ああ、電話で何回か繋いでもらったことがあるかもしれないなぁ。でもそん なこと分かるかって」 「まぁ、そりゃそうだな。ってことでよろしく頼むぜ。親友。うちの妹だから な。仲良くしてやってくれよ、センパイとして、な」 「・・・」 無言で答える武雄君。なんか唐突な展開にちょっと驚いているみたい。わたし も・・・よかった。武雄君の知らない娘で。安心しちゃった。 「おい、優美、いくぞ」 好雄君、言うが早いか優美ちゃんの手を引っ張って連れていっちゃった。後ろ をむきがら、 「高城センパーイ、またー」 と言いながらも引っ張られていく優美ちゃん。なんだか可愛そうな気も。 「な、なんか・・・すごかったね」 わたしはそのままの感想を言っちゃった。でも武雄君もこちらを見るとうんう ん、とうなずいている。 「なんか・・・早乙女君の・・・妹?ふふっ」 「・・・あいつに妹なんか・・・あっははは」 武雄君と顔を見合わせるとぷぷっと笑っちゃった。なんだか余りにすごい生活 を想像してしまったから。あの2人なら天下すら取れる、そんな兄弟にみえち ゃったんですもの。でも、武雄君もきっと同じ感想だったんじゃないかしらね。 昇降口の前に紙が張り出されています。クラス表。そう、2年生に上がる前に クラス替えがあるのです。去年は武雄君と同じクラスだったけど・・・今年も 同じクラスになれるとは限らない・・・ 紙の前には大勢の人だかりが・・・ 見に行かなきゃ・・・武雄君を引き連れて張り出された紙の前に向かいます。 「え〜っと・・・わたしは・・・2−B。武雄君は?」 「お、俺か?う〜ん、あ、あった。2−Cだ」 え?がっかり。同じクラスだったらよかったのにな。 「同じクラスじゃないんだ・・・残念だな」 「まぁそう言うなって、しょうがないじゃん」 「でも・・・このまま3年までこうなんだよ。もうクラス替えないんだもん」 「・・・わがままいうなよ」 武雄君も苦笑気味。たしかに、武雄君に言っても仕方ないんだけど・・・残念 だわ。そしてなにげなく自分のクラスメイトを確認する。早乙女君に、朝日奈 さんもいっしょだ。あ、メグも。よかった・・・知ってる人がいて。 武雄君のクラス・・・あ、未緒ちゃんはC組なんだ。 キーン、コーン、カーン、コーン。 あ、ベルが鳴ってる。もう予鈴がなる時間なの?2年生の教室は一番遠いから 早く行かなきゃ。武雄君と、帰りがけに昇降口で待ち合わせる約束をして、わ たしたちは教室に向かって早歩き。 クラスは違っちゃったけど、仕方ないよね。クラブも一緒だし、これからもず っと・・・