<2nd_GRADE 第12章:March(1)> Shiori's EYE 『1年の終わりに』

  2年生が終わろうとしています。思えばこの1年間もいろいろなことがあった
  わね。ついに武雄君とも・・・ふふっ。

  学園祭。まさか未緒ちゃんの脚本で演劇をやるなんて思っても見なかったわ。
  おかげさまで演劇は成功に終わったみたいだし本当に良かった。未緒ちゃんや
  私、武雄君などは新聞部にインタビューされちゃったりしてなんか有名人。去
  年もすごかったみたいなんだけど、今回はもっとすごかった。新聞部の校内新
  聞に大々的に載っちゃったんだもの。クラス中の人にいわれるまで気づかなか
  ったんだけど・・・全校生徒に配られてるみたい。校内新聞って。ちょっと恥
  ずかしいな。来年は3年生  だから多分出演することはないと思うけど、来年
  も後輩の子たちがきっと成功させてくれると信じて・・・

  修学旅行もなんか楽しかった。武雄君と自由行動。ちょっとしたハプニングも
  あったけど・・・(あの綾香って子、すごかったな・・・)すごく思いで深い
  修学旅行になったわ。恐かったけど、武雄君、私のことかばってくれたし。

  武雄君といえば・・・。

  いきなり朝日奈さんにデートを見つかっちゃうとは思わなかったけど。まさか
  あんなところまで来ているとは・・・流行に敏感な子ってみんなあんな感じな
  のかしら。

  早乙女君の妹、優美ちゃん。あの子もよく分からないなぁ。武雄君のこと好き
  みたいだけど・・・武雄君も武雄君よ。わたしっていう女の子がいながら一緒
  に海にいっちゃったりして。でも、内緒にしていたのはホントは武雄君の優し
  さだってこと、わかってるつもり。私の見ていないところで全部終わらせよう
  ってきっと思っててくれたんだろうな、って思う。そんな武雄君も好きなんだ
  けどね。

  でも、そう思えるようになったのは武生君の叔父様。『ときめ後』のマスター
  のおかげ。マスターがいなかったらわたし、きっと武雄君につっかかってるか、
  一人ですねてるか、泣いてるかしてたと思うもの。血はあらそえない。ふふっ。
  武雄君の叔父様だけあるわ。そっくりかも。

  ・・・わたしが死んでも、武雄君わたしのことずっと好きでいてくれるかしら。
  他の人を好きになってしまうのかしら?

  −あなたはどう思うの?

  えっ?わたし?わたしは・・・わからない。好きでいて欲しいけど、そんなこ
  と、強制できるようなことじゃないもの。

  −あなたは武雄君が死んでもずっと好きでいられるの?

  ・・・好きでいられると思う。

  −その人のことを一生思って独りで暮らしていけるの?あのマスターのように
    さびしく、ひっそりと。

  ・・・。

  自分ですらこんなに自信がないのに、武雄君にだけ『ずっと好きでいて』なん
  て言えるはずないじゃない。どうしてそんなことに気づかなかったのかしら。
  わたし自身が武雄君のことをいつまでも好きでいられるって自信がついて始め
  て武雄君に同じことが聞けるんだものね。今はわたしも自信がない。だから、
  まだまだこれから。先は長いもの、ね。10年間、20年間、いえ、1年間で
  も。武雄君のことを好きでいられるか、どうやったらずっと好きでいられるか、
  考えなきゃ。

  もうすぐ3年生。あと1年で卒業ね・・・。わたしは大学に進むつもり。自分
  の興味あることについて掘り下げて学んでみたいから。先生に話したら「お前
  なら問題ないだろう」っていってくれたし。でも受験って厳しいから、きちん
  と勉強しないと浪人、なんてことになっちゃうものね。頑張らなきゃ。

  そう言えば武雄君は高校卒業したらどうするのかしら?大学に進むのかしら?
  それとも何か他の道に進むのかしら・・・こないだまで全然決めてなかった、
  というよりは悩んでたようだけど、決まったのかしら。聞いてみたい気もする
  けど武雄君自身のことだものね。話してくれるまで待っていようっと。