<第9-6章:December(6)> Shiori's EYE ・・・・・! わたしは無我夢中で武雄君と未緒ちゃんの後を追いかけていきました。でもみ つからないようにしないと。 池に架かっている橋の中間でとまったみたい。わたしは側にあったベンチに腰 を掛けます。話自体は聞こえないけど・・・仕方ないわね。 でも・・・なんでわたし、追いかけてきちゃったのかしら?別にほおって置け ばいいのにね。 ・・・別になんか特別な雰囲気もないみたいだけど・・・ あら? 突然 「絶対そんなことない!!」 の声。あんな声だしたらまわりにみんな聞こえちゃうわよ。でも・・・なぜそ んなこと言い出したのかしら?なにが「そんなことない」のかしら? わたしの心の中は焦りの気持ちしかないといってもいいでしょう。もう心臓が ドキドキして・・・ ・ ・ ・ どうしてドキドキしてるの?詩織。 なんでこんなに胸がキュンとするの?誰に対して?何に対して? 「別に、誰でもないわ」 じゃあ、なんで冬の寒い時に外に出てきたの? 「・・・」 誰かを追いかけてきたの? 「・・・」 なにか追いかけないと困ることでも? 「・・・・・・」 ・ ・ ・ ハッ。 気がついたら未緒ちゃんと武雄君は橋を離れて、建物の方に戻っていくところ でした。なんだか、大事な話を聞きそびれたような・・・そんな気分です。 わたしは、そのまま建物の中に戻ります。メグを置きっぱなしだったものね。 いまごろ、何が起きたのか分からない顔できょとんとしてるかもしれないわ。 ・・・案の定メグは窓の外をみながら大人しくしていました。ポンと肩を叩い てあげると、ピクッとしてこちらを向きます。 「ごめんね、メグ。突然おいてきぼりになんかしたりして」 「え?う、ううん、それはいいの。でも・・・どうしたの詩織ちゃん。なんか 顔色があんまりよくないけど・・・」 「うん・・・大丈夫。なんでもないよ。平気平気」 「でも、突然どうしちゃったの?詩織ちゃん。血相変えて走っていっちゃった けど・・・」 「え?うん・・・実はね・・・」 わたしはメグにさっきまで起きていたことを細かく話したの。でも途中からな んだかボーッとしちゃってよく覚えていないんだけど、そのことも含めてね。 「じゃぁ・・・如月さんは別に高城君となにかあったわけじゃなかったんだね。 それならまだ大丈夫だね」 「うん、それはそうなんだけど・・・」 「元気出してよぉ、詩織ちゃん。いつもの詩織ちゃんらしくないよ」 わかってるの。分かってるのよ、メグ。わたしってばなんだか弱気になってる だけなの。たかだかあいつと未緒ちゃんが話してただけじゃない。別に何事も なかったんだし、気にしても始まらないわよ。詩織!しっかりしなきゃ。 「メグ。楽しもうっ。今日はクリスマスだものね」 「う、うん・・・」 「ほらほら、早くしないとごちそうなくなっちゃうよ。行こう!」 ヤケ食い・・・というわけじゃないけど、なんだかスカッとしたいわ。メグ、 ちょっとつだけきあってよね。