<第9-1章:December(1)> Mio's EYE

  12月・・・それは1年の終わり。
  12月・・・それは旅立ちの序曲。
  12月・・・・・・・・・・・・

  湯船につかりながらもう12月なんですね、と思いながら考え事です。そうで
  すね、もう今年もおしまいなのですね。あと1ヶ月で新しい年の始まりです。

  のぼせる前に上がらなければ。

  ・・・お風呂の後の一杯のミネラルウォーター。別に美容とかそういう訳では
  ないですけど、なんだか心も体も潤う気分です。

  でも、もうすぐ期末テストなんですね。勉強しなくては。

  机に向かい・・・やっぱり考え事をしてしまうのはやっぱり私の悪い癖でしょ
  うか。勉強を始めようと言うのにもかかわらず、眼鏡を掛けないで机の前に座
  るということは・・・ああ、余計なことは考えるのは止めましょう。ぼーっと
  考え事をする時はする、勉強する時は勉強する。それでいいですよね。

  ある種自分に言い聞かせるようにして、机に頬杖をつきます。

  「はぁぁ」と、ため息。

  今日は勉強する気分ではありませんね。こういう時はさっと寝てしまって次の
  日に頑張ることにしましょう。

  そう決めると布団の中にもぐります。まくらを抱きかかえるようにして、横に
  なります。そっと目を閉じる私。

  ・・・・・・・・・。





  私は、海にいました。エメラルドグリーンのワンピースの水着。その肩には黄
  色いリボンがちょこっと。あら?誰かを待っていたような・・・

  「ごめん、待った?」
  「いいえ、ちょっと前に来たばかりですから・・・」

  私は高城君を待っていたのですね。高城君は私を見るなり一言、
  「水着姿の如月さんも結構かわいいね」
  「えっ?」
  「『いや、如月さんの水着姿もかわいいよ』って言ったんだよ」

  そんなこと言われても・・・私の心の中で何かが溢れようしていますが、良く
  分かりません。

  「ちょっとまっててな、俺も着替えてくるから」

  そういうと、高城君は海の家の更衣室へ走って行ってしまいました。5分くら
  い待ったのですが、その間に変な男の人がやってきたのです。その人は20歳
  くらいで、眼鏡を掛けているのですが、いきなり「君は眼鏡を掛けている時の
  方がずっとかわいいね」などと言ってくるのです。私ははっとなりました。ど
  うして私が眼鏡を掛けていると言うことを知っているのでしょうか。今日は眼
  鏡を掛けないで(というかかばんの中には入っていますが)来たのに・・・気
  味悪くなったところに、丁度高城君が来てくれたので事無きを得ましたが、一
  体あの人は何だったのでしょう。

  「なに?あの男は」
  「さぁ・・・わたしにも良く分からないのですが・・・」

  先ほど男の人が話したことを包み隠さず話したところ・・・
  「ふぅ〜ん、なんか気味悪いなぁ」と言った直後に一言、
  「でも、如月さん眼鏡掛けてた顔も十分魅力的だよ。俺なんかにしてみれば如
  月さんが眼鏡掛けてる方がどっちかっていったら好みだなぁ」
  「え?は、はぁ・・・」
  「なに?まずかった?今の一言」
  私はそんなつもりはないと必死になって頭を振ります。隠しても仕方ないです
  ね、言ってしまいましょう、そう思いました。
  「私、眼鏡・・・嫌いなんです」
  「へぇ、そりゃまたどうして?」
  「だって・・・」
  「だって?」
  「邪魔ですし、掛けている自分を見ると他の女の子とかに比べるとかっこ悪い
   ですし・・・」
  高城君はふぅっと息を吐くとこう言ってたのです。
  「そんなことないさ。だって、如月さんは眼鏡掛けてたって如月さんだよ。何
  て言えばいいのかなぁ、あの『眼鏡は顔の一部です』なんてCMやってるじゃ
  ないか、まさしくあれだよ。如月さんから眼鏡を取ったら如月さんじゃないみ
  たいだし、他の奴の言うことなんて聞く必要ないだろ?この俺が眼鏡を掛けて
  いる如月さんがかわいいって言ってるんだからさ。もちろん掛けてない時の如
  月さん・・・なんてあんまり見ないけど・・・もかわいいと思うぜ」

  突然、いわれたのでどぎまぎしてしまいました。

  「な?他の奴の言うことなんて気にするなよ」





  ・・・・・・・・・。

  ふと目を開けると窓から日差しが入ってきます。朝になったのですね・・・と
  いうことは、今までのは夢だったのですか。

  なんだか、嬉しいような、嬉しくないような・・・

  時計を見ると朝ご飯が出来るまでにはまだ1時間ほどありますね。ちょっとだ
  け昨日できなかった分の勉強、やってしまいましょうか。