<第6-1章:September(1)> Mio's EYE

  秋・・・それはちょっぴり悲しい季節。
  新しい葉を生み出すため木々は古い葉を落とす。
  そして裸のままで寒い冬を迎える・・・
  
  新学期が始まりました。久しぶりに会う人達ばかりで、何から話していいもの
  か、困ってしまいますね。藤崎さんや高城さんや演劇部の人たちは合宿中に会
  っていましたけどね。あっ、早乙女君とも会ってますね。
  
  さて、高校生活にも慣れてきました。あと2年と半分で終わってしまいます。
  もう1/6が終わってしまったのですね。

  でも、そんなことより今は演劇部の文化祭での公演の準備です。あと1ヶ月し
  かありません。わたしは役をもらえるのでしょうか?ちょっと不安です。

  今日は、そのキャストの発表の日です。

  演劇部の狭い部室に、全員が集まりました。藤崎さんや高城君もいます。
  部長が次々とキャストを発表していきます。役をもらえる確率は大体30%く
  らいでしょうか。

  名前を呼ばれて大喜びする部員、まだままだかと待ち焦がれる部員。はなから
  諦めている部員、いろいろです。

  「・・・如月。如月はいるか?いないのか?」

  横で誰かがわたしの体をつつきました。
  「如月、いないのか?」
  部長がわたしの名前を呼んでいるのです。
  「は、はい!」
  わたしはありったけの声で返事をしました。なんと、役をもらえたのです!

  その役は劇の中でもかなり重要な役と言ってもよいものでした。わたしに務ま
  るのでしょうか。もう、わたしの頭の中は文化祭のことでいっぱいです。

  結局、高城さんも藤崎さんも役をもらいました。わたしと同じくらい重要な役
  です。3人とも手を取り合って喜びました。しかし、これからが苦しいところ
  です。毎日朝練と、夜は下校時間まで練習。それから、公園で発声練習と練習
  三昧です。でも、苦にならないでしょう、きっと。苦しんでまでも頑張りたい、
  そう思わせるくらい大切な公演ですから。

  そう思っていると、わたしのからだがわたしの体ではないと思えるほど元気に
  動きます。いつものようにすぐにめまいが起きたり、だるくなったり、熱が出
  たりしないのです。

  藤崎さんにこのことを話したところ、こんなことを言っていました。

  「夢中になっちゃうと他のことって考えられなくなるよね。未緒ちゃんもそう
  なったんじゃないのかな?どうにせよ、いいことよね」

  少しでも自分が健康だって思うって重要なことなんですね。「病は気から」と
  いいますが、本当にそうなんだ、と実感できます。

  公演まであと1ヶ月。キャスト・スタッフ全員がラストスパートです。