<第4-2章:July(2)> Shiori's EYE やだぁ・・・よりによってあいつと観覧車に乗るなんて・・・ 私の心はもうドキドキになってる。何を話そうかしら?それともあいつから話し 掛けてくれるのを待っていようかしら? 未緒ちゃん達の方はどんな話しをしているのかしら・・・ 「ねぇ武雄君?」「詩織?」 沈黙を破ったのは2人のうちのどちらかではなく、両方同時でした。 「なに?武雄君?」 「い、いや詩織からでいいよ」 「え?そんな・・・武雄君の方からでいいよ」 二人は沈黙を保ったままです。そうこうしているうちに観覧車はてっぺんに登って しまいます。 「し、詩織はさぁ、如月さんとはいつ出会ったんだい?」 「え?な、なに・・・えっと、クラスが一緒になって、何日かしてからかな?」 「そうなんだ・・・」 なに?いきなり何を言い出すのかと思っちゃった。武雄君は如月さんのこと運動会 の時に助けてるんだっけ。でも、それがどうしたのかしら? 「詩織は。詩織は何かいいたいことがあったんじゃないのか?」 「えっ?あ、あのね・・・演劇部に入ったのって、どういう理由からなの?って」 あたし、特に聞きたいことなんてなかったんだけど、何か話し掛ければ話せるかな って思ったのよね。なんだか、変なこと聞いちゃったかな? 「俺が演劇部にはいった理由?・・・なんだろうなぁ。なんだか、今までとは違う こともしてみたくなったってところかな?」 「そ、そうなんだ・・・」 「ほら、俺ってそんなに自慢出来ることがないだろ?何か自分の中で『これは』 ってものがあればいいなって思ってさ。変か?」 「ううん、そんなことないよ。とってもいいことだとおもうよ」 「そうか、学園のマドンナにそう言われるとうれしいね」 え?武雄君ってば何を言っているのかしら? 「ん?納得行かなそうな顔してるね。詩織はなんでも、同級生だけでなくて上級生 にも人気があるんだぜ。頭脳明晰・才色兼備でさ」 え?え?あ、あたしが?そ、それは、もちろんそう言われるのは嬉しいけど・・・ 「あ、もう1周しちゃったな」 せっかく2人きりになれたのになんだかせつない気分。もう1周できればいいのに な・・・そういえば、早乙女君と未緒ちゃん、どんな話しをしているのかしら? 遊園地には夕方くらいまでいました。それからは4人で和気あいあいと遊びました。 ジェットコースターに乗ったり、お化け屋敷に入ったり・・・ 恐い乗り物ばかり男の人達って乗りだがるんだもの。そして、怖がっている私達を 見て、笑っているの。ちょっとずるいな。 そして、帰る時間になりました。わたしと未緒ちゃんは、高城君、早乙女君にお礼 を言って別れました。その帰り道での話しです。 「藤崎さん。今日はとっても楽しかったですね」 「え?う、うん。未緒ちゃんも楽しんでくれてほんとによかった。未緒ちゃんって こういうのあんまり好きじゃなさそうだし、誘ってもいいのかちょっと心配だった んだけど・・・」 「たしかに、ちょっと恐かったですけど・・・」 「ふふっ、そうね。ちょっと恐かったね」 「でも・・・」 「え?どうしたの?未緒ちゃん?」 「なぜ、わたしなんかみたいな遊園地が好きじゃなさそうな女の子を早乙女君たち は誘ったりしなんでしょうか」 ・・・そういわれてみると、そうよね。なんで、おとなしめの未緒ちゃんを遊園地 なんかにわざわざ誘ったりしたのかしら? 「わからないわね、そういわれてみると」 「でも、誘ってもらって本当によかったです。こんなに楽しい日曜日は久しぶりで したから」 「そう、それならよかった」 「今日は倒れずにすみましたし」 「ふふっ、そうだね。運動会の時から未緒ちゃん、随分と気にしているみたいだか らね」 「そうなんです。保健の先生のおっしゃることはもっともですし・・・わたしも結 構他の人に甘えているのかなと思うと・・・誰かが助けてくれるなんて思ってちゃ いけませんよね・・・自分のことですからね、しっかりしないと」 駅で未緒ちゃんと別れてから、歩きながら思ったことが1つあります。 「なぜ、早乙女君と武雄君は未緒ちゃんを誘ったのか」 です。なぜなのかしら。外で遊ぶの嫌いそうな未緒ちゃんをどうしてわざわざ誘った りしたのかしら?何か特別な理由でもあるのかしら?