<第3-3章:June(3)> Shiori's EYE 今日はきらめき高校の運動会。1年に一回のイベント。・・・といっても普通の 高校とやってることは変わらないんだけどね。まぁ、強いて言うなら・・・フォ ークダンスがあることかな?高校生にもなってフォークダンスって思ってるで しょ?意外に人気あるのよ、このフォークダンス。なぜかって?それは・・・ 「運動会で一緒にフォークダンスを踊ってから伝説の樹で告白すると可能性が 高い」 という話があるの。変なお話だけど女の子ってこういう事結構真面目に考えちゃ うのよね。こういう話って一体どこからわいてくるのかしらね。あたしは、朝日 奈さんっていう隣のクラスの女の子から聞いたんだけど、その子もどっからでた のかよく分からないっていってたわ。 さぁ、あたしは誰と踊るのかしら?あいつだったらいいな・・・ え?あたしったら何てこと考えてるのかしら?恥ずかしい。でも・・・ 「なんだ、詩織じゃないか」 うつむいた顔を上げて見上げると、そこにはあいつがいたの。これって、やっぱ りあたしの願い通じたって事? 「なんか、はずかしいな・・・」 「うん・・・」 「昔はよく手とかつないでさ、公園とか行ったのにな」 今、この瞬間で時が止まってしまえばいい・・・そう思いました。でも現実はそ んなに甘くはなかった。 でも、いいわ。だって、第1関門をクリア出来たんですもの。 無事に(本当によかったぁ)1年目のフォークダンスも終わったときのことでした。 急にグラウンドがざわざわしだしました。なんだか、人だかりが出来ていきます。 (なんなのかしら?) そう思いながら近づくと、朝日奈さんがあたしに声をかけてきました。 「詩織、詩織!如月さんってあなたの友達でしょ?」 「うん。そうだけど・・・」 悪い予感がしました。 「その娘、ちょうど倒れちゃったらしいよ」 「え!?」 わたしは人混みをかきわけて中に入っていきました。横になっているのは・・・ 未緒ちゃん! 「未緒ちゃん!」 すぐさまそばによると、そこには武雄君が未緒ちゃんを運ぼうとしていました。 「詩織か?この娘運ぶから、道を開けてくれ」 わたしはすぐさま実行しました。未緒ちゃん大丈夫かしら?と思いながら。 「う、ううん・・・」 未緒ちゃんが目覚めたのは保健室に運ばれて10分くらいしてからでしょうか。 顔色はそんなに悪い様子はなさそうね、よかった。 「わ、わたしは・・・」 未緒ちゃんは回りを見渡して、 「ああ、グラウンドで倒れてしまったんですね。また・・・」 「未緒ちゃん・・・大丈夫?」 「ええ、今はもう平気ですよ、でも誰がここまで・・・」 「ああ、高城君。知ってたっけ?うちの隣に住んでる幼なじみなんだけど」 「演劇部で一緒の人ですね」 「え?ああ、そう言えばそうだったっけ」 わたしったら、あいつの事口にするだけで動揺しているのかしら? 「お礼を言わなければいけませんね」 「・・・お礼を言う前に、自分自身の身を心配しなさいね」 保健の先生がもう我慢出来ないとばかりに口を挟んできました。 「もう・・・如月さんも16なんだから自分のからだは自分で管理出来ないと だめよ。もし道路とかで倒れて車にひかれたら、それこそ保健室じゃすまない わよ」 「はい。わかってます・・・」 未緒ちゃんちょっと悲しそう。 わたしにとっても、未緒ちゃんにとってもとても忘れがたい運動会になってし まいました。