<第3-1章:June(1)> Mio's EYE わたしが入学してすでに2ヶ月が過ぎようとしています。演劇部の活動も盛んで、体 の弱いわたしにはついていけるかどうかちょっと不安です。でも、クラスメイトの藤 崎さんがいてくれるから、ちょっと安心・・・といったところでしょうか。 今日は日曜日。なかなか厳しい演劇部の練習も今日はお休み。でも、今日は梅雨のま っただなか。しとしと降る雨はわたしの心を暗くしますね。こういう日はおとなしく 自分の部屋で読書でもしているのが一番です。 わたし読書しているときにはたいてい何も考えていません。考えてないというとちょ っと語弊がありますか。わたし何事にも夢中になってしまう性格らしくて、本を読ん でいてもその物語のなかに引き込まれていってしまうんです。だから、本を読んでい るときは他の人の声が聞こえないんです。 でも、今日は違いました。なんだか、いろいろ考え事をしてしまって読書が先に進み ません。どうしてなんでしょう。自分が何を考えているか思い出すと・・・ わたしは入学してからのことを考えているのです。入学して1ヶ月。藤崎さんという お友達も出来ました。演劇部に入部。練習はちょっと厳しいけど、おもしろいのでや められません。じゃぁ、わたしはどうしてきらめき高校に入学したの?なぜ?そんな 考えが脳裏をよぎります。 高校入学・・・そもそも高校進学ってなんなのでしょう。大学に進むための予備校の 代わり?それともただ単に遊びに行くだけの場所?では、わたしは何のために高校に いえ、きらめき高校を志望して、入学したのかしら? 1ヶ月前の記憶が蘇ります・・・ そういえば、わたし入学試験のときに駅で倒れてしまったんでしたね。そこを助けて くれた人も確か・・・きらめき高校を受験していると駅員さんは言ってたような・・ その人は合格したのかしら?きらめき高校に入学したのかしら?是非ともお礼を言わ なくてはいけないから・・・。 そんな事を考えている最中も、雨はしとしとと降り続けます。わたし、雨って好きな んです。どうしてか良く分からないんですけど。たぶん、自分の中の暗い部分を洗い 流してくれるような気持ちにしてくれるからなんでしょうね。 あっ、お母さんが呼んでる。電話みたいですね。 「もしもし、未緒ちゃん。藤崎です」 藤崎さんからの電話でした。 「こんにちは」 「ねぇ、未緒ちゃん。いま・・・暇?」 藤崎さんの電話はわたしを誘って、ショッピングに行こうということでした。ちょう ど雨も弱くなってきたし、街に出てみるのも悪くないかも。 わたしと藤崎さんの家は駅でいうと2駅くらいでしょうか。そのちょうどまんなかの 駅に大きいショッピング街があります。たいてい、きらめき高校の生徒は帰りがけそ こで、買い物をして帰ります。そこの入り口で待ち合わせをして電話を切りました。