<第2章:May> Shiori's EYE
  
  さて、今日はクラブの入部の〆切の日です。あたしはどのクラブに入ろうかしら?
  きらめき高校にはいろいろクラブがあって迷っちゃいます。中学の頃は水泳をやっ
  ていたから水泳部にしようかしら?でも最近運動してないし、太っちゃったかもし
  れないからなぁ。文科系なら、う〜ん、やっぱり演劇部かな?お芝居は昔から好き
  だったし、大きな舞台の上で演技するのってとってもきもちいい。

  ああ、時間がもっとあればゆっくり決められるのに・・・

  ふと教室を覗いてみると・・・あそこにいるのは如月さんじゃない。如月さんもク
  ラブ決め兼ねてるのかしら?ちょっと聞いてみよっと。

  「未緒ちゃん。」

  如月さんは驚いた様子でこっちを見ました。考え事をしていたらしく突然呼ばれた
  のでびっくりしちゃったらしいの。

  「あ、藤崎さん・・・」
  「ごめんね、驚かせちゃって。」
  「ああ、いいんです。ちょっとぼっとしてしまいました。」
  「未緒ちゃんはクラブどうするか決めた?」
  「い、いえ。まだ決めてません」
  「未緒ちゃんのご希望はどこですかな?」
  「わたしは・・・やはり文芸部か演劇部・・・でしょうね。」
  「へぇ、やっぱりそうね。未緒ちゃんって本大好きだもんね。」

  未緒ちゃんは元々体が弱いらしく体育も欠席がち。そんな未緒ちゃんが文科系のク
  ラブを選択するのは仕方ないことよね。

  「そういう藤崎さんはどうするんですか?クラブ。」
  「うんとねぇ、実はあたしもまだ決めてないの。」

  わたしは下をぺろっとだして苦笑い。

  「そうですか・・・時間もないですからね。早く決めないと締切られてしまいます
   ね。」
  「ほんとに、そうね。どうしようかしら?」

  私達はああでもないこうでもないと1時間くらい話し合った上で、2人とも演劇部
  に入部することにしました。同じ部をえらんだのは、やはりクラブ活動で回りに友
  達がいないとさびしいし、不安だから。なんだか、未緒ちゃんとはうまくやってい
  けそう。

  「それじゃ、演劇部の部室に入部届け出しに行きましょう」

  わたしたちはさっそく演劇部の部室へ。部室は体育館の後ろね。ちょっとした舞台
  セットがあってなんだか、小さな劇団のよう。

  「君たち、入部希望?」

  先輩らしき男の人が声を掛けてきた。なんか、先輩だし、ちょっと緊張する。

  「は、はい。そうです。」
  「じゃ、入部届けを出してくれる?」

  2人は入部届けを出した。これでわたしたちは演劇部の部員なのね。

  「じゃ、とりあえずさ、壁際にでも座って練習風景を覗いていってよ。だいたい週
  3日。こんな感じで練習してるんだ。で、一番のメインはやはり文化祭かな?もち
  ろん市主催の演劇コンクールっていうのもあるけど、そっちはレベルが高すぎて俺
  らじゃ太刀打ち出来ないからね。ま、ゆっくり見学してよ」

  あらためて回りを見るとわたしたちみたいに壁際に座っている新入生らしき人は1、
  2、3・・・10人くらいかしら?男の子もいるわね。あ、あれは・・・高城君。
  なんだ、あいつも演劇部に入部するのね。俺はクラブなんてどうでもいいなんてい
  っておいて・・・

  あ、彼の紹介がまだだったわね。彼の名前は「高城武雄」君。誕生日は10月の1
  6日。血液型は・・・たしかA型だったかしら?趣味は・・・そう、パソコン。あ
  あ、ずぼらそうにみえて実は機械が好きでいろいろいじくりまわすのよねぇ。こな
  いだなんて、自分のパソコン改造しようとして失敗しちゃって・・・くすっ。

  もう、そのパソコンは使い物にならないんだって。好奇心旺盛な男の子です。

  なんでわたしが彼のことそんなに詳しいのかって?ひ・み・つ。
  ・・・なんてね。実は私と彼はお隣同士なんです。お互い生まれたときからずっと。
  小さい頃はよく一緒に遊んだっけ。いつの頃からか全く遊ばなくなって。お互いの
  顔すらも見なくなってしまって。これって、男の子と女の子だから?たったそれだけ
  の理由でこんなに離れ離れになってしまうの?よくわからない・・・

  あっ。武雄くんがこっちを見た。私に気づいたみたいね。手を振ってるもの。わたし
  も手を振りかえす。

  実はわたし、彼のことが好きみたいなの。自分でもよく分からないんだけどどうして
  も武雄君のことが頭をよぎってしまうのよね。寝るときも、お風呂のときも(きゃっ)。
  たまに、授業中も。でも、なんか彼には足りないものがあるのよ。なんだかよく分か
  らないけど足りないものが・・・それのせいでわたしは彼に告白するのをためらって
  いるの。武雄君はわたしが武雄君のこと好きだってこと解っているのかしら?あいつ
  鈍感だから解ってないと思うけど・・・

  「藤崎さん。藤崎さん・・・」

  隣で私を呼ぶ声がする。未緒ちゃんだった。わたしったら、あいつのこと考えてて活
  動が終わっているのに気づかなかったみたいね。

  「ごめんね未緒ちゃん。」
  「いいえ、気にしなくても良いですよ」
  「帰りましょうか。」

  自宅に戻ってからお風呂につかってゆっくり考え事。
  結局わたしは演劇部の活動はほとんど見ずに武雄君のことばかり考えてたみたいね。
  ちょっと恥ずかしいけど、やっぱり彼のこと好きみたい。
  ・・・ということは、告白?そういえば伝説の樹がうちの高校にはあったっけ?
  わたしも伝説・・・狙ってみようかな。