<第11章:Februaly(1)> Mio's EYE 2月にはいってすぐのことでした。昼休みのことです。 「ねぇ、如月さん」 私を呼ぶ声がします。聞いたことのない声です。誰でしょう?そっと振り向く と、そこにはショートヘアーの女の子。クラス章からいくと同じ学年のようで す。 「如月さんよね?あたし1年C組の朝日奈っていうんだけど」 突然の自己紹介にびっくり。どうしたんでしょうか。 「はい、如月ですが・・・どうかしましたか?」 「それがね・・・詩織のことなんだけど・・・」 「藤崎さん?」 「そう。詩織」 「藤崎さんがどうかしましたか?」 「最近、詩織の様子でおかしいところとかない?」 「は!?」 何がいいたいのでしょう。尋問でしょうか? 「いや、妙にボーっとしてたり、上の空だったり、一点を見つめてたりとかし てない?」 「さぁ・・・」 さすがにそこまで藤崎さんのことを観察しているわけではありませんし・・・ 「う〜ん、ええいっ、言っちゃえ」 そう言うと朝日奈さんは私の耳元に口を近づけてこうささやきました。 「どうも、詩織、誰かと付き合ってるみたいなのよ」 「誰かと?」 「そう。なんかあたしを差し置いてだれかカレシをつくっちゃったみたいなの よー。んもう」 「はぁ・・・」 朝日奈さんは同じクラスのメンバーの誰かだと確信したらしく、私に探りを入 れて欲しいとお願いしてきました。私にそんなこと出来るわけないじゃないで すか、と断りを入れると。 「いいんだって、適当に詩織のことみてて、変だなぁと思ったことをあたしに 報告してくれればいいのよ。超簡単じゃん」 「そういわれても・・・」 「まぁまぁ、いいじゃん、それじゃよろしくね。毎日昼休みのこの時間、ここ で報告会よ」 そんな・・・勝手に決めないでください!といおうと口を開いた時には疾風の ようにいなくなっていました。・・・ふぅ、不思議な女の子ですね。 午後の授業。お昼ご飯を食べたあとはさすがにちょっと眠くなってしまいます。 あ、そうだ。藤崎さん・・・私はそーっと左前を観察します。先生の授業を一 生懸命聞いている藤崎さんの姿。別に普通な藤崎さんです。(こんなことして いたら私が授業聞けないですね)と思いながらも藤崎さんをじっと見つめてい る私。 誰かと付き合ってるみたいなの・・・と朝日奈さんは言っていました。誰と? そう考え始めるとキリがありません。 キーンコーンカーンコーン・・・ ああ、チャイムが鳴りました。今日の午後の授業は全然聞いていませんでした ね。これではダメですね。授業はやはりしっかり受けないと。ちょっと自戒。 放課後。 「未緒ちゃん」 「あ、藤崎さん・・・」 別に何があるわけでもないのにちょっと構えてしまいます。普通にしなきゃ。 「帰り?一緒に帰らない?」 「ええ、いいですよ。でもちょっと職員室に寄らないといけないので、昇降口 で待っていてもらえませんか?」 「うん、じゃぁ待ってるね」 「5分くらいでいけますので・・・それでは後でまた」 「そんなに急がなくてもいいからね」 私は急いで職員室へ。ちょっと駆け足気味。すたすたと早足で歩きながら・・ ・!! ふっとしたことでした・・・ちょっと気を抜いていたのかもしれません、悲し いことに私はいつものようにフラフラと・・・ああっ、めまいが・・・早く止 まらないとこのまま倒れてしまう・・・体が言うことを聞かない・・・あっ、 もうだめです・・・・・・ パフッ。 「おっと。大丈夫?如月さん」 「・・・」 「だめだなぁ体弱いのに駆け足なんか・・・しょうがないなぁ」 ・・・・・・私の意識はそこまででした。 「・・・ううん」 「あ、気がついたかしら?」 「こ、ここは・・・?」 見覚えのある場所。私はベッドで横になっていました。ここは・・・ 保健室。 いつものごとく・・・だったのでしょう。私は誰かにここに連れてきてもらっ たのでしょう。保険の先生が心配そうこちらをみています。 「大丈夫?如月さん?」 「は、はい・・・大丈夫そうです」 先生は私の体の状態をご存知なので、半ば呆れ顔。 「もう。今度はなにをしたのかしら?100m走でもしたの?」 「・・・」 「冗談よ。ろうかを駆け足で行ってたんですってね」 「・・・」 「大丈夫?まぁ普通の貧血みたいだから問題はなさそうだけど・・・」 「は、はい。ちょっと頑張りすぎてしまいました。あっ!」 「どうしたの?」 「そう。待ち合わせ!昇降口で待ち合わせていたんです、それで・・・」 私はベッドから起きあがろうとしますが、体がまだ思うように動きません。頭 がボーっとしたままです。 「だめよ、まだおとなしく寝ていなさい」 「でも・・・待ち合わせてるんです」 「仕方ないわねぇ・・・先生が行ってくるわ。誰と待ち合わせてるの?」 「同じクラスの藤崎さんです」 「ああ、あの演劇部の。わかったわ。じゃぁここにいることを伝えてくるわね」 「・・・すみません。よろしくお願いします」 「じゃぁちょっと行ってくるわね。ゆっくり目を閉じて横になっていなさい」 「・・・はい」 「未緒ちゃん!」 5分くらいでしょうか。ちょっとウトウトしている間に藤崎さんは保健室まで 来てくれたようです。 「・・・あ、藤崎さん・・・」 「だ、大丈夫?平気?」 「あ、いつものことです・・・それより・・・済みませんでした。待ち合わせ てたのに」 「もう。何言ってるのよ。未緒ちゃんの体の方が重要でしょ?」 「・・・ごめんなさい」 「平気?辛くない?・・・未緒ちゃんのことだからムリして駆け足で職員室ま で行こうとしたんでしょ?」 「・・・」 「図星?もう。あれほどゆっくりでいいって言ったのに」 でも・・・人を待たせるのは私はいやなんです・・・人の迷惑にはなりたくな いんです。 「まぁ、大丈夫そうだからよかったね」 結局、藤崎さんに職員室に変わりに行ってもらって、その間私はベッドで休憩。 いつになってもこんな感じなんでしょうか・・・駆け足しただけでめまいがす るくらい弱い体のままなのでしょうか・・・いつか、元気に走りまわれる日が 来るのでしょうか・・・ なんだか悲しいですね。