<第10-1章:January(1)> MIO's EYE 新年。1年の始まり。今年はどんな年になるのかしら。願わくば幸せでありま すように・・・。 長期休み中は寝坊気味な生活もこの日だけはしっかりと。 朝起きて顔を洗い、歯を磨き。両親に新年の挨拶。そして仏前にも挨拶をして。 それが済んで始めて私の「今年」が始まります。もう10数年もやってますの で慣れてしまいました。逆にそうでないと落ち着かないですね。かつて1回だ け旅行(家族で伊豆に旅行に出かけていたのです)でいつものならわしをやら なかったのですが、気持ち悪かったです。習慣とは恐ろしいものですね。 お正月くらいゆっくり本でも読んで・・・と思ったのですが、本はいつでも読 んでますね、ふふっ。今日くらいは神社に初詣にでも行きましょうか。 沙希ちゃん、いるかしら?だって、野球部はお正月も返上で練習のようなこと を言っていましたし・・・ 私は受話器をあげ、電話します・・・ 「はい、虹野です」 「あ、虹野さんのお宅でしょうか。如月と申しますが沙希さんはご在宅でしょ うか?」 陽気な声が返ってきました。 「未緒ちゃん?沙希よ。あけましておめでとう。今年もよろしくね」 「あ、こちらこそ。よろしくお願いしますね」 「う〜ん、それはそうと『ご在宅ですか?』はないんじゃない?『いますか』 とか、いろいろあるじゃない。友達じゃないみたいだよ」 「えっ?あ、あまり考えたことなかったから・・・」 「そっか、未緒ちゃんのうち、結構しつけが厳しいんだもんね」 「というか、そういう言い方に慣れちゃったんだと思うんだけど・・・」 「うん、わかった。余計な事言っちゃったかもね、ごめんね」 「あ、そんな・・・気にしないでください」 「うん・・・あっ!」 突然大きな声を出す沙希ちゃん、私はびっくりしてしまいました。 「ど、どうしたんですか?」 「で、なにか用事があってかけてきたんでしょ?」 「え、ええ。そんなにおどろかなくても・・・」 「そ、そうね。ごめぇん」 沙希ちゃんとはいつもこんな会話が続きます。どことなく抜けていてそれでい て愛くるしいのが沙希ちゃんのいいところなのですよね。 「沙希ちゃん、これから用事、ありますか?」 「ううん、ないけど」 「よかった・・・神社に初詣に行きませんか?」 「うん!私も行こうと思ってたところなんだぁ。一人はさびしかったし。うん、 行こう行こう」 ということで午後に待ち合わせして神社にいくことに。支度にはあまり時間を かけません。というよりは私自身おしゃれとかそういうことには興味ないんで すよね。もちろん人並みにはおしゃれしてるつもりでいますけど・・・沙希ち ゃんや藤崎さんに言わせると・・・「まだまだ」だそうです。朝日奈さんなど に言わせると「チョー、ダサダサ。まだまだよね」などといわれる始末。そん なこといわれても・・・まぁ好きな人でもできたら思いっきりおしゃれしたり お化粧したりするのでしょうか。 好きな人?・・・うーん・・・私に好きな人?いるのかしら? そうこうしているうちに約束の時間が迫ってきてます。そろそろいかないと時 間までに間に合いませんね。早速出かけることにします。 約束の時間より5分ほど早目に到着。沙希ちゃんは・・・まだ来てないようで すね。彼女はどちらかというと時間にはルーズなところがあるから気長に待ち ますか。 約10分後、要するに5分後れで沙希ちゃん到着。まぁこれくらいならいつも のことですしね。気にしません。 「ごめんね〜、未緒ちゃん」 「え?気にしないでください。これくらいなら遅刻とはいいませんよ」 「う〜ん、そう言ってもらえると嬉しいな」 「気にしない気にしない。それじゃ行きましょうか」 女二人で神社を歩く。二人ともラフな格好。周りには晴れ着を着た娘が大勢。 「なんか、浮いちゃってるよね。あたしたち」 「そうですね・・・でも普段着で来ている人もいるじゃないですか」 「そ、そうよね」 「あ、あれは・・・」 沙希ちゃんが一点を見つめています。その先には・・・ 「藤崎・・・さん?」 藤崎さんがお参りをしているではありませんか。 「未緒ちゃん、行ってみよっか?」 「そうですね。大勢のほうが楽しいですからね」 私たちは藤崎さんのほうに近づいていきます。藤崎さんに悟られないように。 そして・・・ 「わっ!」 「わっ!」 と二人で突然藤崎さんの前に現れると・・・ 「きゃっ!」 藤崎さんはというと・・・目を丸くしてこちらを見ています。まだ事態が飲 み込めていないみたいですね。 「あ、沙希ちゃんに、未緒ちゃん・・・んもう!」 ぷぅっと膨らませた顔を見ると、どうやら藤崎さんも事態が飲み込めたみた いですね。 「もう!おどかさないでよ。すっごくびっくりしちゃったじゃない」 「ごめんごめ〜ん。そんなにハデにするつもりはなかったんだけど・・・予 想外に驚いちゃうんだもん、詩織ちゃんってば」 「あんな登場されたら誰でも驚くよ」 「す、すみませんでした。ちょっとやりすぎでしたね・・・」 「あ、でもいいよ。気にしなくて。では改めまして・・・あけましておめで とう。未緒ちゃん、沙希ちゃん」 「あ、あけましておめでとうございます、藤崎さん」 「おめでとう、沙希ちゃん」 「藤崎さんは一人なの?いっしょにお参りしようよ」 「え?う、うん」 ということで、3人でお参りをすることに。 パンパン。 柏手を打って。お願いごと。私ですか?・・・私は・・・内緒です。なんて 「体が健康になりますように」です。これしかないですよね。ほかの人たち はどうなんでしょう。ちょっと聞いてみましょうか。 「え?あたし?あたしはもちろん!『サッカー部が県大会で優勝しますよう に』よ」 「あたしは、あたしは・・・内緒」 「え〜、詩織ちゃんずるいよぉ〜おしえてよぉ〜」 「え、どうしようかなぁ・・・」 じゃぁちょっとだけね、といいながら3人は駅前の喫茶店に。結局詩織ちゃ んはちょっとだけはなしてくれました。どうやら好きな人がいるみたいです。 誰なのでしょう。